日本代表、ベトナムに勝利も問題を露呈 1トップの周辺でボールが収まらない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 ベトナムと最後に対戦したのは2022年3月のカタールW杯アジア最終予選で、スコアは1-1だった。日本が本大会出場を決めた後の消化試合だったが、右肩上がりの成長を続けるベトナムに日本は手を焼いた。

 アジアカップでは前回2019年大会の準々決勝で顔を合わせている。スコアは1-0。辛勝ではなかったが、楽勝でもなかった。

 近年のベトナムには後進国から中堅国へ、ワンランク昇格した印象を抱いていた。なんといっても個人の技量が圧倒的に向上した。この日の試合でも、同点弾を決めたグエン・ディン・バクなどは、Jリーグでも十分にやっていけそうな技量の持ち主に見えた。

 ベトナムにもっと高い位置から攻撃的に迫ってこられたら、試合内容はもう少し拮抗していたに違いない。例によって5バックで後ろを固める、フィリップ・トルシエ監督の消極的なサッカーに日本は救われた。セットプレーから奪われた2ゴールにしてもラッキーパンチが当たったようなもの。流れのなかから作られたチャンスでは、菅原由勢が前半、イエローカードの反則で止めたシーンぐらいに限られた。スコアは4-2ながら、ベトナムとしては完敗だった。内容で日本に大きく上回られた。

 だが、日本から見て完勝だったかと言われればノーだ。かつてならいざしらず、今回の森保ジャパンは2026年W杯でベスト8以上を狙っている。欧州組の数だけでなく、欧州カップ戦に出場するエリート選手の数でも過去最高を示している。

ベトナム戦にほぼベストメンバーで臨んだ日本代表 photo by Kyodo newsベトナム戦にほぼベストメンバーで臨んだ日本代表 photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る しかも森保一監督はこのベトナム戦に、現状で考え得る限りほぼベストメンバーを送り込んでいた。1トップの細谷真大を、上田綺世ではないかと見た人のほうがやや多かった程度だろう。4人のディフェンダーも、2人の守備的MFも、3人の第2列にも、予想どおりの顔が並んだ。もう少し崩したメンバーで戦っていたら言い訳は許されるが、このメンバーでは評価は厳しめになる。

 細谷は元日に国立競技場で行なわれたタイ戦にも先発で出場しているが、パスワークに有効に絡むことができなかった。前々から筆者は「細谷は1トップには不向き。1トップで使うなら、その下(脇)にポストプレーヤーを置かないと機能しない。浅野拓磨と似たタイプである」と述べてきた。タイ戦ではまさに指摘どおりの結果に終わっていた。

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プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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