日本代表、ベトナムに勝利も問題を露呈 1トップの周辺でボールが収まらない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ゴールを背にしたプレーができない】

 しかし森保監督はアジアカップのメンバーに細谷を招集し、タイ戦に続きこのベトナム戦でも先発で1トップに抜擢した。期待の程がうかがい知れた。

 決定機は1度、訪れた。前半44分。中村敬斗、遠藤航、伊東純也を経由してエリア内で構える細谷にボールが入った。左足でトラップしていれば、角度がついてシュートに持ち込めたかに見えたが、細谷は懐浅く右足でトラップ。相手DFのチャージに遭い、潰された。ゴールを背にしたポストプレー巧者でないことが、明らかになったシーンだった。

 森保監督はここで細谷を断念。後半の頭から1トップの座には上田が座った。ダメ出しするような交代だった。初戦の前半である。森保監督はパリ五輪を狙うU-22期待の星をこれからどう扱う気なのか。細谷のいかにも幅の狭そうなプレーは、今後、改善される必要があるが、1トップに抜擢しながら前半でダメ出しするようにベンチに下げた森保采配は、それ以上に問題だ。

 1トップ下が南野拓実ではなく、鎌田大地なら話は違っていたかもしれない。南野は確かに2ゴール(先制点と同点弾)を決める活躍をしたが、ポジションをカバーする意識に欠けた。ポストプレーが得意ではない1トップと、離れた距離でプレーしすぎた。4-2-3-1の1トップ下というより、4-3-3のインサイドハーフ的だった。

 南野もゴールを背にしたプレーをけっして得意としていない。左右に動きたくなる理由である。したがって、細谷に代わって投入された上田も孤立した。ボールに触れた回数は数えるほど。症状は改善されずにいた。

 これは何度となく指摘していることだが、森保ジャパンのサッカーは中央の攻撃が決まらないのだ。左右のウイングには人材は目白押しだが、4-2-3-1で言えば、1トップと1トップ下が務まるいわゆるセンタープレーヤーがいない。ところが監督・コーチは、1トップ周辺にボールが収まらないサッカーを否定的に見ていない。細谷の抜擢がいい例だ。大迫の穴を、穴と見ていない様子なのだ。

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