谷口彰悟が驚いたカタール文化 1時間の遅刻にもイライラせず、身の回りの清掃は自分でやらない (4ページ目)

  • text by Harada Daisuke

 ただし、前述したように、カタールでは豚肉を摂ることができないため、食事のレパートリーには正直、だいぶ苦戦している。主に使うのは鶏肉か牛肉になるが、牛肉もあまり食べる習慣がないため、基本的には鶏肉がメインになっている。

 現地の料理にも、好物はできた。カタールはペルシャ料理やアラビア料理が主流と言えるだろうか。自分がそのなかでも好んで食べているのは、『フムス』と言われる豆料理。ひよこ豆をペースト状にした料理で、ヘルシーだし、試合前日に宿泊した時にはいつも食べている。ほかには、『タブーリ』と言われるパセリやトマトといった野菜を細かく刻んで、オリーブオイルとレモンで和えたサラダも好んで食べている。

 基本的には、現地で購入できるものが多く、シーズンオフを経てカタールへ戻る時も、日本から持ち込んだものは決して多くはなかった。強いていえば、日本で生活していた時から使っていたシャンプーやコンディショナー、それこそ歯ブラシや歯磨き粉など、日ごろから愛用していた日用品がほとんどだろう。

 それくらいカタールでの生活に、馴染んできた証拠なのかもしれない。強いて困ったことと言えば髪型、つまりヘアカットくらいだろうか。一度、カタールのヘアサロンで髪を切ることにチャレンジしてみたが、細かいニュアンスが伝わらず、髪だけは帰国した際に切ろうと決意した。

 シーズン前のキャンプも含め、日本に帰国するタイミングが長期間とれない時は、思いきって丸刈りにしようかと真剣に悩んだくらい。今は日本に帰国した際に、何とか時間を調整して髪を切っているが、日本のヘアスタイリストの技術が高いこと、日本人の髪の特徴を把握していることを知り、あらためて彼らも僕らと同じプロなのだということを実感する。

 今回は、カタールと日本の習慣や文化の違い、さらにはカタールの魅力を綴ってみたが、もうひとつ驚いたことをつけ加えると、ビーチが綺麗なことだった。

 郷に入れば郷に従え──。カタールでの生活が始まり1年が経とうとする今、自分なりにこちらでの生活リズムを築いている。

◆第13回につづく>>


【profile】
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2022年末、カタールのアル・ラーヤンSCに完全移籍。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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