なでしこジャパンに「攻めない75分間」が生まれた悲劇 アジアで各国に力の差がある背景と複雑なレギュレーションの是非

  • 早草紀子●取材・文 text&photo by Hayakusa Noriko

【過去の五輪予選でもっとも公平だったのは?】

 AFC(アジアサッカー連盟)が、オリンピック予選という形を作ったのが2000年シドニーオリンピック後のアテネ大会から。当時は中国一強で、他の国はワールドカップで世界と戦えるレベルになく、アジア上位2チームがオリンピックに出場できる、という設定には無理があった。

 この時は3グループを勝ち抜いた4チームでノックアウトラウンドを戦うという厳しいものだったが、最終予選開催地の招致に日本が成功したこともあり、自国でジャイアントキリングを起こした。一度も勝利したことがなかった北朝鮮を下し、"国立の軌跡"と称される勝利で出場権を獲得した。その後の北京大会の最終予選は2グループに分かれてホーム&アウェーを戦い、それぞれの上位1チームに出場権が与えられた。日本は組分けにも恵まれ、韓国とのドローはあったものの安定の勝利の積み重ねが効いて首位の座を守りきった。

 ロンドン大会とリオデジャネイロ大会の予選は、5強を除いて1次予選、2次予選を総当たり戦で行ない、最終予選も5強+予選を勝ち上がった1チームによって、総当たり戦(ロンドン大会:中国開催/リオ大会:日本開催)が行なわれた。予選の開催地は希望する国を募った上で決まっている。

 ロンドン大会の予選で無事に勝ち上がった日本は、本大会で日本史上初の銀メダルを獲得するも、リオ予選では無念の敗退。東京大会は開催国枠の日本が抜け、2グループに分かれてオーストラリア、韓国の地で総当たり戦が行なわれ、各上位1チームに切符が与えられている。

 過去を振り返ってもAFCが盛り上がりを見せる予選の形を模索している様子がわかる。ホーム&アウェー方式は、前年にW杯を戦う女子チームにとって体力的に負担があること、アジアの発展途上国においてホームでの試合開催は経済的な負担が大きいことを考えると、最も不公平感がないのが、ロンドン、リオ大会時と同じくすべての予選をセントラル方式の総当たりで行なう短期決戦だろう。

 ただ当時、各国から序盤は中一日での連戦、後半も中二日で戦い、計5試合を戦う過密日程に不満が続出した。日程の改善に関しては、AFCのみならず、国を超えて選手を抱える各国の協力が必要だが、そこさえクリアできれば、不可能ではないはずだ。

 もちろん総当たり戦であっても対戦順による損得、複雑な星計算は生まれるだろうが、現状よりも公平さは担保される。公平感で言うならば、今回のように最終戦がグループ内でも時差があり、あとから試合をするチームが他の試合結果を見てプレーができてしまう状況は言語道断だ。

 参加する誰しもが全力を尽くすことができるレギュレーション、は最低条件だ。ゴールは2得点までとしていた日本は得点を挙げても心から喜ぶことができず、ウズベキスタンは攻めてこない相手を前にボールを奪い返す動きすらはばかられる――あの75分間、ピッチに立っていた両チームの選手が浮かべていた拭いきれない複雑な表情は、見る側もツラい。今回大きく取り沙汰されたことをきっかけに、勝負のみに集中できるよう予選の形が改善されることを強く臨む。

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