AIでサッカーを変える! 東大卒のキックコーチ・田所剛之の最終目標は「デ・ブライネをうまくするレベルまで行きたい」 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

【論理的に説明できなければいけない】

――田所さんのキック理論は、これまで日本で広まっていたものとは一線を画するものだと思うんですが、その理論はどのようにして確立していったのですか?

 基本はとにかくトップ選手のキックを見ることですね。一つのやり方に執着せずに力学とかさまざまな知識を用いて、とにかくその選手のキックの秘密を暴いてトレーニングに落とし込んでいく。それだけですね。

――例えばひとりの選手のキックを分析する時に、どれくらい映像を見ているんですか?

 同じ文字を見続けると、わけがわからなくなってくるゲシュタルト崩壊ってあるじゃないですか。あれが起きるくらい見ますね。僕が一番見たのは、ロシアW杯のブラジル対ベルギーで、デ・ブライネが決めたミドルシュートです。

 いろいろと視点を変えて、軸足がどうなっているか。足首、ヒザ、上半身はどうか。そうやって何度も見すぎて、頭がおかしくなってきて「なんだこれ」みたいになってきてからが始まりです。そうなると先入観が全部取れた状態で見ることができるんです。

 そうやって段々といろんなものが見えてくるんですけど、それに確証はないので自分の独自理論になります。トップ選手のキックを何度も見て、分析して、仮説を立てて、それを論理的に説明がつくようにする。それが僕のやり方です。

――理論を確立していく過程で、他の競技を参考にすることはありましたか?

 メジャーリーガーの大谷翔平選手のような、アッパースイングのバッティングフォームだったり、剣道の達人クラスの振り方だったり、違う競技から着想を得ることはありますね。

 僕のモットーは科学的ではなくてもいいけど、論理的に説明できなければいけない。実験で証明できる必要はないけど、誰が聞いても納得ができて、せめて議論ができるくらいには説明ができる状態にする。それをずっと目指してやっていますね。

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