阪口夢穂が今だから明かす、2019年W杯直前のケガ「膝が壊れてもいいから試合に出ようと思っていた」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

【明かさなかった膝のケガ】

 2021年、WEリーグ開幕元年を迎えた阪口のコンディションは、決していいわけではなかった。そしてWEリーグ開幕を前に、もっと言えば東京オリンピックを前に膝の故障に再び襲われた。

「大宮が始動したばかりの(2021年)2月、日本代表に声がかかったけど、また膝をやってしまっていたので行けず......高倉さん(高倉麻子監督)は最後まで回復を待ってくれてました。ほんま、選手冥利に尽きますよね。大宮に移籍した段階で、コンディションが戻っていれば、東京オリンピックで何かをする自信はありました。でも、しょうがないです。これも人生!すべてタラレバですもん」

 とはいえ、とにかく膝のケガには苦しめられた。最初は北京オリンピック後にアメリカへ挑戦した直後の2009年に左膝前十字靭帯断裂を負う。2012年には左膝半月板損傷。2018年の5月、右膝前十字靭帯と内側半月板の損傷はフランスW杯の前年のことだった。

「さすがに2018年の時は、『マジか、時期!!』って自分に突っ込みましたよね(苦笑)。でもそれは完治して......実はリリースされなかったんですけど、W杯の3カ月半前に、また半月板やってしまったんです。W杯を考えてオペしないことを選択して、リハビリに入りました。でも、その時がきたら膝が壊れてもいいから試合に出ようと思ってました。もちろん試合に出す出さないは高倉さんの判断やけど、実はそのままサッカー辞めてもいいやぐらいの覚悟を持って臨んでたんです。誰も知らないけど(笑)」

 確かに、大会中、何度か本気で試合に出ようとしてることが伝わるくらいにボールを蹴っている日もあった。しかし、その翌日には膝の状態が悪化して別メニューに戻るという繰り返しだった。

「もう膝パンパンで(苦笑)。あの期間中、短パン履いてなかったはずですよ。とても見せられるもんじゃなかったから。帰ってすぐオペしましたよ(笑)」

 阪口の言葉で、当時の練習での彼女の表情や会話、振る舞いなどのすべてがつながった。自分の膝と常に向き合ってきた芯の強さを改めて感じさせられた。

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