阪口夢穂が今だから明かす、2019年W杯直前のケガ「膝が壊れてもいいから試合に出ようと思っていた」
阪口夢穂、プロサッカー選手の
肩書き返上を語る(前編)
2023年4月9日、突如、阪口夢穂が自らの進退についてSNSでつぶやいた。
「今日からプロサッカー選手という肩書きは返上することにしまーす」――実に阪口らしい、しかし考え抜かれたその一文のなかに込められている想いを紐解くために、彼女に会いに行った。
これまでのサッカー選手としての歩みを一つひとつ語った阪口夢穂 当然のことながら、含みのあるその一文に多くの人が疑問符を抱き、関係各所からも問い合わせが相次いだ。こんな大事になるとは本人は思い至らず。つぶやくことを3日前に決断し、そのためにアカウントを開設したという。
「どうも"引退"っていうワードが......仰々しいし、固いし、重いし(苦笑)。すでに無所属やったから、プレスリリース発表っていうのも違うし、ね。もっとラフな感じにしたかったんです。そしたら、ああいう言い回しがいいなって思って、解釈は受け止めてくれた人にお任せします、でええんちゃうかなって。思いのほか大騒動になってしまってビックリですよ」
最終所属となった大宮アルディージャVENTUSから阪口の契約満了における退団が発表されたのが昨年6月のことだった。
「大宮は辞めようと思っていました。なんか、その時すごくフラットな気持ちになってて、他のチームからもオファーはいただいていたんですけど、やりたいともやりたくないとも思わない。オファーがきても、『サッカーをしたい!』って気持ちに振れなかったんですよね。だから時の流れに身を任せる感じでした。完全に"無"やったんです」
ならば、なぜこのタイミングでのあのつぶやきに至ったのか、大宮退団から約10カ月の間に、いろいろな葛藤があったようだ。
「別に生涯現役!でもいいと思うんです。自由やし。きっかけはひとつではないんです。でもそのひとつになったのはWEリーグからイベントの出演依頼がきて、『これ受けたいな』って思ったこと。だとしたら、このまま中途半端な状態でいるのはよくないじゃないですか。女子サッカーのために私ができることがあればしたいって思ったんですよね」
"無"から、初めて心が動いた場所が女子サッカーのためにできること、だったのであれば、自然に心はそちらへ向いていたのだろう。
「先のことなんてわからないでしょ?アマチュアのピッチでボール蹴っているかもしれないし、草サッカーでキャプテンマークを巻いてるかもしれない(笑)。でも今の自分には区切りは必要やと思いました」
彼女自身、きっかけを待っていたのかもしれない。そして大きく安堵したのはサッカーに対して"無"でも、それは決して無関心ではないということが彼女の言葉から十分伝わってきたことだ。
「ここまで30年くらい?それなりにやってきて、必要としてもらえる選手としてプレーしてこられた。やっぱりサッカー好きですよ。楽しいもん。だから燃え尽きた訳でもないし、燃え残ってる訳でもなくて、"無"なんです」
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