三笘薫の足跡を辿れるか U-22日本代表の欧州遠征で大学生の佐藤恵允が猛烈アピール (2ページ目)

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • 川森睦朗●撮影 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

【2試合2ゴール1アシスト】

 直近はコンディションがよかったわけではなく、100%ではなかった。それでも、巡ってきた機会を無駄にするわけにはいかない。今遠征ではエース格の斉藤に加えて、三戸もドイツ戦の前に負傷離脱しており、サイドの手駒が足りなくなる状況だった。どういう形であれ、結果を残せれば、一気に序列を変える可能性を秘めていたのだ。

 迎えたドイツ戦。左ウイングのポジションで先発起用されると、持ち前のパワフルな突破で存在感を示す。劣勢が続く展開のなか、ボールを受ければ、力強いドリブルでボールを前に運んでいく。「ピッチに入場する時に自分よりも大きくて、ちょっと圧倒された」と屈強なドイツ人選手に驚きを隠せなかったが、グラウンドでは臆さずに身体をぶつけてボールをキープ。日本の選手で肉弾戦に負けていなかったのは佐藤ぐらいで、改めてフィジカルの強さは群を抜いていると感じさせた。

 0-1で迎えた前半43分にはCKの流れから同点ゴールをゲット。ニアサイドで木村誠二(FC東京)がすらすと、ファーサイドに走り込んで頭でネットを揺らした。さらに後半立ち上がりの開始24秒だ。ロングボールの処理にもたついた相手DFのミスを逃さずにボールを奪いきり、細谷真大(柏レイソル)の勝ち越し点をアシストした。直後に追いつかれて2-2のドローとなったが、ブンデスリーガで活躍する猛者が揃うドイツに対して1ゴール・1アシストの結果は十分に胸を張れるモノだった。

 ただ、試合後の佐藤には浮かれた表情は一切なかった。勝ちきれなかったことがあるとはいえ、自身のパフォーマンスには胸を張ってもよかったはずだが、本人は「今日スタメンで結果を残せたのはよかった」としつつも、「まだまだです。自分がもっとよさを出していれば勝てた」と悔しさを隠そうとしなかった。

 向上心を持って臨んだ27日のベルギー戦はベンチスタートとなったが、見せ場は後半に訪れた。

 チームは序盤から相手に押し込まれ、ほとんど何もさせてもらえない展開だった。3-4-2-1の相手に対し、日本は4-3-3でハメにいくが、ミスマッチが頻発してサイドを崩されるシーンが目立った。0-2で終えた前半はいいところがほとんどなかった。

 そうした状況下で後半開始から佐藤が投入される。与えられたポジションは3-4-2-1のシャドー。2列目で自由に動きながらチャンスメイクする役割を担うと、持ち前の打開力で局面を崩していく。54分にはドイツ戦と全く同じ形のCKから一撃をねじ込んだ。木村のすらしたボールにファーで詰め、豪快に右足でネットを揺らした。

 以降もフィジカルで相手に競り勝ち、攻撃の起点として機能。途中から3-4-1-2のトップ下、4-4-2の右サイドハーフに入るなど、相手の立ち位置が変わる度にポジションが目まぐるしく変わったが、そつなくこなして適応能力の高さもアピールした。2-3で敗れたものの、2試合を通じて2ゴール・1アシストの活躍で追加招集の期待に応えた。

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