日本嫌いの前任者→トルシエがベトナム代表監督に就任 すぐに合意したのは「同じ条件という提示額をそのまま受け入れた」 (4ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kyodo News

――現在のベトナムは、アジアのなかでどの程度の地位にあると見ていますか。

「15~16位といったところだろう。それ以下かもしれない。

 だが、本大会への椅子は8つしか用意されていない。大変なチャレンジには違いないが、小さな希望の窓は常に開いている。目的はこの窓をうまく利用することだ。私のこれまでの国際経験を、ベトナムの人たちと分かち合いながら。

 それは、私が日本で行なってきたことでもあった。25年前の日本には、ヨーロッパでプレーする選手はほとんどいなかった。だから、私はラボラトリー(※4)を作り上げて、選手に必要な情報を与えた。効果的なパフォーマンスを実現するために、彼らの行動様式を変え、戦う武器を与えた。
※4=実験室の意。主に合宿により、選手に戦術とシステムを理解させ、トルシエ流のスタイルを身につけさせるための実践の場。

 繰り返すと、目的は東南アジアでのステイタスを維持しながら、そこを超えてW杯予選を突破するパフォーマンスを発揮できるようになることだ。そのための方法として、目的に沿って私のメソッドを推し進め、クラブとの間にバランスのとれた関係を築いていく」

(文中敬称略)

◆インタビュー(2):トルシエが感じた日本サッカーとベトナムの類似点 小野伸二や稲本潤一ら黄金世代ともU-20代表は「よく似ている」>>

フィリップ・トルシエ
1955年3月21日生まれ。フランス出身。28歳で指導者に転身。フランス下部リーグのクラブなどで監督を務めたあと、アフリカ各国の代表チームで手腕を発揮。1998年フランスW杯では南アフリカ代表の監督を務める。その後、日本代表監督に就任。年代別代表チームも指揮して、U-20代表では1999年ワールドユース準優勝へ、U-23代表では2000年シドニー五輪ベスト8へと導く。その後、2002年日韓W杯では日本にW杯初勝利、初の決勝トーナメント進出という快挙をもたらした。

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