日本嫌いの前任者→トルシエがベトナム代表監督に就任 すぐに合意したのは「同じ条件という提示額をそのまま受け入れた」 (3ページ目)

  • 田村修一●取材・文 text by Tamura Shuichi
  • photo by Kyodo News

 交渉が始まったのは、(2022年)11月になってからだが、瞬く間に合意に達した。即決したのは、私が金銭面の要求を一切しなかったからだ。朴と同じ条件という、彼らの提示額をそのまま受け入れた。協会も新たな出費を迫られることなく、これまでと同額の支出を継続すればよかった。

(自分も)ベトナムに戻りたい気持ちは強く、モチベーションは高かった。好きな国だったし、選手のポテンシャルにも魅力を感じていた。協会の人々への信頼もあったし、サポーターにも親近感を感じていた」

――ベトナムを離れた2年前の時点で、協会にはあなたに朴監督の跡を継いでほしいという気持ちがあったのでしょうか。

「そうだが、それは非公式なものだった。協会幹部のなかに、その気持ちを抱いている人たちがいるのは私も感じていた。自分の席が用意されているとも思った。

 しかし当時はまだ、朴が代表監督に就いていた。そこに曖昧さは一切なく、彼が代表監督である間は、私の名前が挙がることはまったくなかった。実際にコンタクトがあったのは、朴の契約終了が公式に発表されてからだ。とはいえ、会長や協会の信頼は感じていた」

――ベトナムサッカーにはポテンシャルがあると言っていますが、ベトナムの現状をどう見ていますか。また、どこに目標を置いているのでしょうか。

「代表チームが得た結果やトロフィーを見た時、東南アジアのなかでベトナムは大国のひとつであることを認識した。2度のシーゲームズ優勝に、AFFカップも制した。直近のAFFカップでも決勝に進んだ。(東南アジアで)ナンバー1のチームといっても過言ではない。それが、今日のベトナムのレベルだ。

 私の目的はふたつある。この東南アジアナンバー1のレベルを維持し続けることと、東南アジアを抜け出して世界60位までの国々に対して、パフォーマンスで成果を挙げることだ。

 具体的には、2026年W杯のアジア予選突破。そのために、あらゆる可能性を追求し、最大限の努力をしていきたい。W杯は2026年から大会形式が変わり、出場国が48に拡大する。そのひとつを、ベトナムが獲得したい。その可能性がベトナムの人々に希望を与える。

 しかし希望の達成には、実際の行動を伴わねばならない。というのも、その希望はUAEやカタール、バーレーン、オマーン、ウズベキスタン、中国、タイ、マレーシア、インドネシアらが抱いている希望でもあるからだ。

 新たなW杯の形式は、アジアの多くの国に希望を与えた。チャレンジは決して簡単ではなく、常に困難がつきまとう」

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