にわかに高まる「PK論争」。W杯ベスト8進出を目指す日本代表もその対策を考えるべきか (2ページ目)
この大会でPK戦までもつれ込んだ試合は全部で12、つまり、PK戦で勝ち上がった高校は延べ12校あったが、うち9校が全員成功(残る3校にしても、失敗はひとりだけ)。そこでは、ひとりの失敗も許されないほどのハイレベルな攻防が繰り広げられていたのである。
もちろん、プロと高校生とを一概に比較することはできない。
高校総体にしろ、選手権にしろ、主な大会がトーナメント戦で行なわれる以上、高校生にとってのPK戦は多くの時間を費やしてでも準備する価値のあるものだが、シーズンを通じてのリーグ戦が主な戦いの舞台であるプロは違う。
いつ訪れるかもわからないものへの準備に多くの時間を費やす必要があるのか。それよりも前にやるべきことがあるのではないか。その発想には一理ある。
とはいえ、日本はこれまでワールドカップの決勝トーナメント1回戦で4回敗れ、ベスト8進出を逃してきているが、そのうち2回がPK戦敗退。つまり、決勝トーナメントに進出した時には、2回に1回の確率で勝負がPK戦に持ち込まれているのである。
だとすれば、日本代表でもPK戦のための準備がもっと必要なのではないか。そうした議論が起きるのは当然の流れだろう。
そんな折、PK戦対策を考えるうえで参考になる話が聞かれたのは、1月14日、15日に開かれたJFAフットボールカンファレンスでのことだった。
このイベントは、日本サッカー協会が全国の指導者に向けて、先のワールドカップを振り返っての分析結果をフィードバックするものだが、そこにゲストスピーカーとして招かれたオランダ代表GKコーチ、フランス・フックの話が実に興味深かったのだ。
フックコーチによれば、オランダ代表は当初、ワールドカップ登録メンバー26人のなかに「ゲーム用に3人、PK用に1人のGKを入れることを考えていた」。
そのために6人のGKを集めて、「リーチやジャンプ力の測定に加え、相手が蹴ったあとに、どれくらいのスピードで上下左右に動けるかのテストを行なった」。過去にワールドカップ出場の経験もあるベテランGK、ティム・クルルらがPK用GKの候補だったという。
最終的には、チームのエースストライカーであるメンフィス・デパイのコンディションに不安があり、万一に備えてFWの数を増やすためにGKは3人体制になったというが、なかなか興味深いPK戦対策である。
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