日本代表の後方に人が余っていたクロアチア戦。森保監督はカタールW杯でどんなサッカーがしたかったのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

三笘を最終ラインに据える超変則的布陣

 PK戦で敗れると、惜しくも敗れ去った、ある意味で美しい敗者のイメージが強まるが、日本がPK戦で敗れる姿に、口惜しさをさほど感じなかった。PK戦に逃げたという印象を与えたのはクロアチアではなく、日本だったからだ。

 クロアチアは最後まで1点を狙っていた。老獪なパスワークからその機会を虎視眈々と狙っているのが、視角のいいスタンドからよく理解できた。日本も頑張ってはいた。しかし、それは論理性に乏しい選手個人の勢い、あるいは精神論に頼る、古めかしい頑張りだった。

 わかりやすいのは後半19分に行なった長友佑都から三笘薫、前田大然から浅野拓磨への同じポジション同士の交代である。

 この変更を経ても、布陣はスタート時と同じ5-2-3のままだった。クロアチアは4-3-3なので、日本の最終ラインとの関係は5対3になる。日本はDF陣2人が後方でダブついた。それは前方では2人少ない現象に陥っていることを意味する。プラス1人ならわかる。しかし常時プラス2人(前方ではマイナス2人)となると、満足な攻撃はできない。なによりパスルートがなくなる。

 後方の守りを固めることに重きを置いた守備的な布陣を敷きながら、同時に前線の数的不利を解消するためには、アタッカー陣の理屈を超えた爆発的な攻撃力が不可欠になる。

 言い換えれば、論理的に破綻した精神力頼みのサッカーとなる。森保監督はそれを後半19分以降も継続した。日本で最もドリブル力のある三笘を最終ラインに置く5バック。この守備的で超変則的なサッカーを、これまで試してきたならともかく、採用したのはカタールに来てからだ。

 5バックでさえ、日本で試したのは、就任当初を除けば、最近の数試合に限られている。それも試合の終盤に数分間程度だ。それがカタールW杯ではスタンダードな作戦になった。ドイツ戦の後半、コスタリカ戦の終盤、スペイン戦およびクロアチア戦は、5バックが常態化したサッカーを展開した。

 一方で、快進撃の要因は5バックにありというムードが、気がつけば醸成されていた。しかし、それを認めてしまうと、この4年間は何だったのかという話になる。

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