日本代表の後方に人が余っていたクロアチア戦。森保監督はカタールW杯でどんなサッカーがしたかったのか

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

 本人の意思はともかく、クロアチア戦を前にして、森保一監督の続投を煽るような記事が目立っていた。しかし、この延長、PKに及んだ決勝トーナメント1回戦は、次の4年間(3年半)を森保監督に任すことができない理由が凝縮された試合となった。日本が志向する姿と逆行するサッカーを延々120分間見せられた試合。筆者の目にはそう映った。

 両軍のスタメン表がFIFAからメールで送られてきたのは、試合開始の1時間半前で、そこには両軍選手の所属チームも記されていた。

 レアル・マドリード(ルカ・モドリッチ)、チェルシー(マテオ・コバチッチ)、スパーズ(イバン・ペリシッチ)、インテル(マルセロ・ブロゾビッチ)など、ネームバリューの高い一流のクラブに所属している選手は、クロアチアのほうが多かった。クロアチアが12位で日本が24位というFIFAランクも見すごされがちだった。

 そうした空気感は選手、監督にも伝播する。日本はのっけからチャレンジャー精神に欠けるサッカーを展開した。大人数で後ろを固め、1トップ前田大然を走らせてカウンターを狙う、言うならば臆病なスタイルである。色気たっぷりに手堅く、慎重な姿勢で勝ちを拾いにいった。思慮深いサッカーと言えばそれまでだが、キチンと攻めようとする姿勢に乏しかった。プレスをかけ、組織的に高い位置で奪おうとするのではなく、後ろで守るサッカーである。ボール操作術を全面に、つなぐサッカーで対抗する日本のよさは、この雑なスタイルでは発揮しにくい。

延長、PK戦の末にクロアチアに敗れた日本代表延長、PK戦の末にクロアチアに敗れた日本代表この記事に関連する写真を見る 前半43分、しかし先制点を挙げたのは日本だった。右CKを堂安律がショートコーナーとし、鎌田大地、伊東純也経由でリターンを受けると対角線クロスを送球。すると相手のクリアがゴール前に転がり出るラッキーとなった。詰めた前田はこれを難なく蹴り込み日本は1-0とした。

 クロアチアが同点に追いついたのは後半10分。デヤン・ロブレンの後方からのクロスを、イバン・ペリシッチが狙いすましたヘッドで、日本ゴールを揺るがした。

 ここから65分間、両軍にゴールは生まれなかったわけだが、日本よりクロアチアのサッカーに正統性を感じながら時は推移していった。

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