谷口彰悟、初のW杯の舞台でスペイン相手に冷静に対処。どんな思いで試合に臨み、勝つために何を考えていたのか (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 Sato Shun
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 でも、その気持をどこかにぶつけることはないですね。サッカーのことはサッカーでしか返せないですし、自分に出番が回ってきた時にちゃんとしたパフォーマンスを出すために準備をし続ける。毎日の練習をしっかりこなし、そこで発散していく。

 そうして、ネガティブな気持ちを超越していくのは当たり前のことですし、代表はそういうことができる選手の集まりだと思います」

 後半から3バックに移行したドイツ戦で冨安が途中出場した時も、悔しい思いを抱えたが、監督の決めた選手起用に対してアクションするのは無駄なパワーを使うことだと思い、チームの勝利を願ってベンチから応援した。試合後は勝利の余韻に浸るのではなく、「早く練習をしたい」と思って、次の試合に結びつけていけるように気持ちを切り替えた。

 コスタリカ戦前の練習では、齊藤俊秀コーチとグラウンドを歩き、同じDFとして試合を振り返りつつ、感覚をすり合わせる作業をした。結局、コスタリカ戦も出番はなかったが、ぐっとこらえて、その日を待った。

 ようやく森保監督からスタメンを言い渡されたのは、スペイン戦の2日前だった。

「よっしゃー、やっときた。やってやるぞという気持ちになりました」

 スペインの動き、前線の選手の特徴を頭に入れ、ピッチに立った。最初は緊張したが、そこはベテランだ。呼吸を整え、動いている間に比較的落ち着いてプレーできるようになった。しかし前半11分、アルバロ・モラタにフリーでゴールを決められ、スペインに先制された。

「できるだけゼロの時間を長くするということを、試合前にみんなで話をして試合に入ったんですけど、あんな形で失点してしまって......。とにかく、1-0の状態で我慢しながら冷静に戦おうという話をピッチ内でしていました」

 スペインにボールを完全に保持され、相手のポゼッション率は79%にも及んだが、谷口ら最終ラインは慌てなかった。厳しい状況のなか、活路を見出すべく、視野を広げてプレーした。

「防戦一方のゲームになると、どうしてもマイボールの時間がほしくなりますし、自分たちがボールを動かす時間を作りたいと、みんな思っていました。なので、自分が(ボールを)奪った時には落ち着いて、周囲を見ながら誰に(ボールを)つけたら時間ができるかなっていうのを考えながらやっていました。

 それでも、相手にすぐボールを回収されて、また攻撃されるという状態が続きましたけど、そのトライは今後もできる限りやりたいと思います」

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