W杯史上、究極のジャイアントキリングを達成した日本の驚くべきデータ。パス1000本を駆使したスペイン相手に、シュートわずか6本で勝ちきる (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

ボールは回されたがシュート数は抑えた

 では、インテリオールのガビとペドリは誰が見るのか。守田が前に出れば、中盤は「田中碧対ガビ&ペドリ」という1対2の数的不利に陥る。そこで日本は、攻撃が左サイドに偏る傾向にあるスペインに対し、日本の右サイドをタイトに、逆に相手の攻撃の脅威が低めの左サイドをルーズにするかたちで対応した。

 つまり、中盤は田中がペドリをマークして、浮いたガビが後方に落ちてきた場合は相手の右SBセサル・アスピリクエタをマークする鎌田大地が間に立つことで前進をふさぎ、ガビが高い位置をとる場合は谷口彰悟が前に出てマーク。右ウイングのニコ・ウィリアムズには、長友佑都をマッチアップさせた。

 一方、日本の右サイドは久保建英が左SBのアレックス・バルデを、ウイングバック(WB)伊東純也が左ウイングのダニ・オルモとマッチアップ。中央は吉田麻也がアルバロ・モラタをマークするので、右CBの板倉滉が余るかたちになるが、そこはブスケツやペドリにライン突破を許した場合の防波堤役とした。

 試合序盤の日本は、そのようなメカニズムで守備を機能させたが、しかしスペインは一枚も二枚も上手だった。11分、自由にボールを保持できることがわかった左CBパウ・トーレスがドリブルでブスケツの左脇まで前進。ペドリのマークを捨てざるを得なくなった田中を引きつけてから、ダニ・オルモに展開して日本のMF「4」の網を突き破ると、左から右に揺さぶりをかけ、中央のマークがずれたところにアスピリクエタがクロスを供給。最後はモラタがヘッドで決めている。

 ただし、失点後の日本は守備を微修正。最終ラインと1トップまでの距離をよりコンパクトにして、谷口がガビを、板倉がペドリを、吉田はそのままモラタをマーク。前半終了間際に3人がそれぞれのマッチアップでイエローカードをもらってしまったが、裏を返せば、それは守備がハマっていたことの証明とも言える。

 前半を終了した時点のスタッツは、ボール支配率では日本の14%に対してスペインは78%(中立8%)、パス本数でも日本の127本(成功102本)に対してスペインの562本(成功530本)と、かなり一方的。

 一方、日本のシュートは伊東(9分)と鎌田(36分)が記録した枠外シュート2本だけだったが、ボールを保持するわりにはスペインのシュートも5本(枠内3本)しかなく、ある意味、日本が1失点で済んだのは論理的でもあった。

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