コスタリカ戦で望まざる強者の立場となった日本。布陣変更や選手交代の何がダメだったのか (3ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

最後尾の人数を必要以上に余らせた

 0-0で迎えた後半、森保監督は長友に代えて伊藤洋輝、1トップの上田に代えて浅野拓磨を起用した。もし日本が、敢えて相手にボールを持たせてからカウンターを仕掛ける狙いがあったのだとすれば、その采配に整合性は生まれる。ところが、逆に日本は後半開始から敵陣での攻撃の圧力を強めるばかりで、カウンター攻撃をほとんど発動していない。従って、浅野の活躍の場はなく、最後尾で余った伊藤は相手の2列目4枚の右側に空いたスペースに張り出して、パス供給役を担わざるをえない状況となった。

 4-2-3-1のままであれば、おそらくその役割はダブルボランチの守田英正と遠藤航が担っていたはず。仕事内容と選手のキャラクターのミスマッチも起きてしまった。

 さらに日本の攻撃にブレーキをかけたのが、試合終盤に近づくにつれて、主に守備陣から垣間見られた「勝ちたいけれど、負けたくもない」という微妙なメンタリティだった。ほとんどカウンターの気配さえも見せない相手に対し、最後尾の人数を必要以上に余らせたのがその証左で、リスクをかけた縦パスを打ち込むことを必要以上に避けていた。

 同じ傾向は、ベンチワークからも見て取れた。後半の途中、森保監督は山根に代えて三笘薫を、堂安に代えて伊東純也をピッチに送り込んだものの、ドイツ戦のような玉砕覚悟の賭けに出るような采配は見せなかった。もちろん、状況からしても、最低でも勝ち点1は確保したいという心理が働くことは当然と言えば当然だ。

 そんななか、コスタリカは後半65分に前線にフレッシュな戦力を投入。75分にはこの試合で初めて、日本のビルドアップに対して前からプレッシャーをかけ、いよいよ攻撃的姿勢を見せ始めた矢先の81分、この試合の決勝点が生まれた。

 もし対戦相手がドイツやスペインだったら、この失点に関わった三笘、伊藤、吉田、守田のプレー選択は、もっと違ったものになっていた可能性は十分に考えらえる。そういう意味では、最後まで望まざる強者の立場で戦うことを強いられた日本にとって、生まれるべくして生まれたミスと言っていい。

 果たして、再び弱者の立場として挑むスペイン戦で、日本は再び奇跡を起こすことができるのか。少なくとも、強者として足元をすくわれたコスタリカ戦よりは、チームの意思統一や戦術のマッチングという点で、何らかの活路を見出すことはできるはずだ。

【筆者プロフィール】
中山淳(なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。

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