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ドイツ戦逆転勝利にもどこか浮かない顔の鎌田大地に見た、日本代表の成長の結晶 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 その結果として、「神風」は吹いた。ドイツは多くのチャンスを決められず、フィニッシュ精度に問題があった。0-1とリードした後は、次の戦いを計算したのだろう。戦勝気分に浸ってしまい、交代カードを切るたび、パワーダウンしていった。日本が5バックにし、スペースを埋められたことで、攻撃にも勢いが失われた。

 鎌田を筆頭にした日本の選手たちの成長の結晶が、奇跡を呼び込んだ。

「僕はスペシャルなところはない選手。チームがよくなったことで、個人もよくなるところがあるし、個人がチームをよくすることもあると思う」

 鎌田は冷静に言う。彼がチームを牽引しているのは間違いないが、ナルシズムに浸ることはなかった。冷めているようで、熱い選手だ。

「鎌田はポーカーフェイスというか、顔色が変わらないから、プレー中のいい写真を撮影するのは難しい」と、現場でファインダーを向けるフォトグラファーは言う。しかし、サッカーで誰にも負けない、という気概は強い。感情は誰よりも燃え上がる。

「今日の勝ちは大きいですが、すでに過ぎたこと。次のコスタリカ戦で勝ち点を逃せば、意味がなくなってしまう」

 静かな口調が頼もしかった。11月27日は、勝てば早々にベスト16入りも見えてくるコスタリカ戦だ。 

【著者プロフィール】小宮良之(こみや・よしゆき) スポーツライター。1972年、横浜生まれ。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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