サッカー日本代表の1トップ問題。福田正博が戦術面だけでなく未知なる要素からも起用を推す選手とは? (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nakashima Daisuke

前線で起点になれる上田綺世を置くべき

 これはカタールW杯本番を想定しても、重要な戦い方になるはずだ。「いい守備からいい攻撃」を標榜する森保監督の下、日本代表が強豪国を相手にして勝ち点を手にするには、まずは失点のリスクを抑える必要がある。そのために最善の対策を取ったうえで、試合終盤に勝負に出る。これが数少ない勝利への方程式だと思うからだ。

 ドイツ戦やスペイン戦は、エクアドル戦以上に相手にボールを保持されて押し込まれる展開になる。その時にスピードのあるタイプを前線に配置し、DFラインの裏にある広大なスペースを使う狙いを持つ手はある。しかし、ボールを奪ったあとにいいボールを味方に出せるかとなると、相手のプレッシャーを考えればそうそう成功する策ではない。

 結局、ボールを奪ってもすぐに相手ボールになって、また守備に追われる。そうなると、疲労の蓄積が後半の勝負どころで出やすくなってしまうと考えられるだろう。

 それよりはボールを奪うたびに、ボールを持つ時間をつくって一度しっかり守備陣形をリセットできるようにする。これは疲労度の面でも大事だし、相手が押し込んでくるのを多少は踏みとどまらせることにもつながる。

 理想を言えば、ボールを奪って1トップに当てた時に、ボールキープできたり、味方に落としたりしてくれるといいが、世界屈指の強豪国のDFを背負って、その仕事を完璧にできる選手など、日本はおろか、世界でも限られている。

 それでも、前線に起点となれる選手を置く意義があるのなら、まずは守備面を考えて1トップには上田を配置するべきだと思う。

 もちろん、上田ではなく大迫勇也(ヴィッセル神戸)でもいい。彼のコンディションが11月23日に迎えるドイツ戦までに復調するのであれば、彼ほど日本選手で起点になるプレーのうまい選手はいない。

 ただ上田は、体格で上回るドイツ代表やスペイン代表の圧力に屈しないだけのパワーを体に秘めている。エクアドル戦で見せたヘディングシュートのように、ほかの日本選手なら強くヘディングできない態勢からでもしっかり合わせられる。

 あのパワーは体幹だけではなく、足から繰り出すシュートにもある。そうした未知なる要素があるのも、大舞台では不確定要素が勝負を決めたりするだけに上田の起用を推したい理由だ。

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