女子W杯まで1年。なでしこジャパンが国内2戦で試した若手と新システムの可能性

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 FIFA女子ワールドカップまであと1年。今月6日と9日に国内で行なわれた2試合は、実践的な納得感が得られる挑戦だった。

 日本選手の帰国が揃わず万全の態勢が整わなかったナイジェリアを相手にした初戦、中2日で迎えたW杯開催国であるニュージーランドとの対戦で、池田太監督は初めて3バックに挑んだ。

U-20から上がってきた藤野あおばが、存在感を示したU-20から上がってきた藤野あおばが、存在感を示した 池田監督の指揮で先月準優勝したFIFA U-20女子W杯でも用いたシステムだが、構想自体はU-20で試す前から抱いていたもので、なでしこでは満を持してのトライとなった。とはいえ海外組の8名を含め、全員が揃ったのは初戦前々日の夜とあって、ナイジェリア戦は、ほぼぶっつけ本番だった。何とか試合自体はセットプレーとPKで勝利を収めたが、3バックでの収穫は、スライドポジションやビルドアップの共有など修正点が出たという点のみだった。

 しかし、そこから中2日という短い時間での修正力に、このチームの戦術理解度の高さを見た。

 うしろの3枚の狙いがハッキリしていたことも調整を加えながらではあるが、守備を安定させられた要因だ。中央に熊谷紗希(FCバイエルン・ミュンヘン)、両サイドにはフィジカルとビルドアップに自信のある高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)、南萌華(ASローマ)を並べた。特に南は3バックの可能性を強く感じ取っていたひとり。

「手応えはありました。うしろ3枚で動かしていても、ダイヤモンド的に選手がいるので、ワイドもうまく使うと相手もワイドに広げられる利点もある。自分のロングフィードで相手を引き寄せて遠くにというのは意識しました」(南)。

 この2連戦の挑戦で得た最大の収穫は、ポジショニングの視野が明らかに広くなったことではないだろうか。W杯やオリンピックでメダルを争う相手と対峙した時には、共通する弱点があった。常に嫌なポジションを取られることで、日本は動きを封じられてきた。わずか数メートル位置をズラされるだけで、である。それを今回は日本がニュージーランドにやってみせた。

「(海外の強豪は)3バックが多い。こういうことで(相手を)掴みにくいんだなっていうのは自分たちが実際にやってみてわかった。自分たちが3枚のやり方を攻略しつつも、相手はこうやってたんだっていうのを感じながらプレーできているので勉強になってます(笑)」(南)

 3バック下の展開時、相手のサイドバックがスライド対応しても、その奥からもう1枚が絡むことができる。

「これは自分たちが4枚で対戦した時もすごく嫌だったので、うまくやれればめちゃくちゃチャンスを作れる。いつも強豪とやる時は受け身の守備だったんですけど、今は仕掛けていく守備ができているので、それを高めていけば相手に、日本とやるのは嫌だなって思わせる戦術ができると思います。楽しいです!」と、南は充実感たっぷりの表情だった。

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