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女子W杯まで1年。なでしこジャパンが国内2戦で試した若手と新システムの可能性 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

初招集の若手も躍動

 また、この戦術下で若い力も躍動した。U-20世代から抜擢された藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が第2戦で初スタメン、フル出場を果たした。ナイジェリア戦でも途中出場し、ボールを受けてから相手DFのプレスのタイミングを見切ってミートさせるシュートを放つなど冷静さを見せていたが、ニュージーランド戦ではその冷静さとシュート感覚が際立っていた。

 なでしこデビューで掴んだものは「前向きの場面を作れたこと、チャンスメイクに関われたこと」と語る。

 任されたのは3トップの右。3バックの経験値と、ベレーザで速いパススピード展開に揉まれていること、前線で組む植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)や右サイドのウィングの清水梨紗(ウェストハム・ユナイテッド)のプレーを熟知していることも確かにプラスに働いた。

 だが、彼女の素早い判断力と、怖がらないポジション取り、シュート感覚はすでに代表レベルだ。加えてキックの精度は終始セットプレーのキッカーを担うほど。「ゴールこそなかったけれど、直属の後輩として、仲間として、ライバルとして本当にすごいプレイヤーだと改めて感じた」とベレーザでともにプレーする植木もその実力を認める。

 フィジカル的にはここから高めていく必要があるが、それほど時間はかからないはずだ。あとは世界の強度にどこまで順応できるか、また今回は招集が見送られた岩渕真奈(アーセナル)や長谷川唯(マンチェスター・シティ)らが入ったときの化学反応も楽しみだ。

 若い力と新システムが現実的なオプションになり得るかはその強度をどこまで高められるかにかかっている。3バックのコツを掴み始めたニュージーランド戦後半には、3バック、4バック、5バックと選手たちが立ち位置をスムーズに変えて対応する場面も見られた。

 来月には今年最後の海外遠征でUEFA欧州女子選手権2022(7月)を制したイングランドと対戦する。W杯優勝候補筆頭でもあるこのヨーロッパチャンピオンにどこまで通用するのか、そこでなでしこジャパンの現在地も明らかになるだろう。

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