サッカー日本代表の1トップ問題。福田正博が戦術面だけでなく未知なる要素からも起用を推す選手とは? (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nakashima Daisuke

前田大然の速さ、体力は途中出場が効果的

 両サイドは、右の伊東純也(スタッド・ランス)は相変わらず存在感を示し、左は久保建英(レアル・ソシエダ)がクラブでの好調さをしっかりと代表にも持ち込んだ印象だった。久保は左サイドに固着せず、中央にも入ってくるプレーがあったのがよかった。右サイドの伊東はボールを持ったらひとりで縦に仕掛けるタイプなだけに、鎌田にとっても久保が近い距離にいることでコンビネーションを使って相手を崩せるのはやりやすいのだろう。

 1トップはアメリカ戦では前田大然(セルティック)が先発し、途中出場で町野修斗(湘南ベルマーレ)。エクアドル戦は古橋亨梧(セルティック)がスタメンで、後半から上田綺世(サークル・ブルージュ)に代わった。

 前田は先発でも使えるとわかったのは収穫だ。アメリカ戦は相手のコンディションが悪かった点を差し引いても、彼の前線からのプレッシャーによって相手のミスを誘発した点は評価しなければいけない。日本代表の1トップにはああいう仕事も求められるからだ。

 ただ、前田の走る速さや何度もチェイスし続けられる体力などは、やっぱり途中出場のほうが生きるのかもしれない。相手DFラインの選手に疲れが溜まる後半、前田のプレッシャーを受けたらミスを誘発する可能性は高まるからだ。

 古橋はもっとアピールしたかっただろうが、彼が持ち味を発揮するには難しいメンバー構成だった。エクアドル戦のトップ下は南野拓実(モナコ)だったが、古橋のようなタイプはパサーがいてこそ生きる部分は大きい。それだけに鎌田と組んだプレーが見たかったところではある。

 カタールW杯のドイツ戦やスペイン戦を想定した時に、1トップとしてアピールに成功したのは上田だろう。エクアドル戦の前半は相手に押し込まれる展開になり、ボールを奪ってもパスの出しどころがなくて押し返せず、再び奪われる悪循環に陥った。

 前線の1トップがスピードのある古橋、両サイドがドリブルの得意な三笘薫(ブライトン)と堂安律(フライブルク)の組み合わせだった。だが、彼らにいい形でボールを配球できれば局面を打開できるものの、そうでなければ相手にすぐに囲まれてボールを奪い返されてしまう。

 その状況を変えたのが上田だった。日本は自陣でボールを奪い返したあとに最前線の上田に向けてパスを1本入れることで、DFラインを押し上げられた。長いボールを入れている間にDFラインを押し上げられ、上田がキープできれば攻撃の起点になれる。

 また、上田がすべてのパスをマイボールにできなくても、相手が上田を警戒し、ボールを保持している時でもDFラインを押し上げきれないという効果も出た。だからこそ、日本代表がペースを取り戻すことになったわけである。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る