羽生直剛が語るオシム。「僕はあの人にすべてを教えてもらった。偉大な人の伝道師になれたら...」 (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

"羽生社長"が一歩を踏み出す原動力となったのは、オシム監督からの言葉はもちろん、それに支えられて積み上げた自分自身の経験であることは間違いない。

「僕自身もサッカー選手として、1年目にそれなりに試合に出て、2年目でちょっと安堵している時にオシムさんに会い、そこからはとにかくオシムさんに引き上げられた。その感覚で言うと、もうこれでいいやって思っちゃダメなんだと思うし、オシムさんに教わった以上、やっぱりそれはなしだと思うし。

 僕にとってはプロサッカー選手であったことって、もうどうでもよくて、ここからの人生をどうチャレンジングにしていくのか。次の成功って何なのか。幸福度の高い働き方ってどういうことなのか。そういうところに向かうべきだと思っています。

 サッカー選手だったことは終わって、じゃあ、次、どうしたらオシムさんが納得してくれるぐらいのチャレンジになるのか、っていうことにフォーカスしているっていう感じです」

 もっと上を見ろ――。

 羽生は今もなお、亡き師からの言葉に突き動かされ続けていると同時に、自身が得た学びを次につないでいきたいとも考えている。

「もっと上を見なければいけないって言われて、僕は会社を立ち上げた。そこで何かを表現できれば、オシムさんのことを語り継ぐ機会もきっと増えると思います。

 偉大な人の伝道師みたいになれたらな。そんな思いはありますね」

(おわり)

羽生直剛(はにゅう・なおたけ)
1979年12月22日生まれ。千葉県出身。八千代高から筑波大に進学。同大学を卒業後、2002年にジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)入り。1年目から主力選手として活躍。プロ2年目には"人生の恩師"であるイビチャ・オシム監督と出会って、2006年には日本代表入りを果たす。2008年、FC東京に移籍。その後、ヴァンフォーレ甲府、FC東京でのプレーを経て、2017年シーズンには古巣の千葉へ完全移籍。同シーズンを最後に現役から退いた。2018年からFC東京のスカウトを務め、2020年には自らが代表取締役を務める(株)Ambition22を設立。スポーツ事業におけるマネジメント、支援、教育サポートを行なう事業を展開し、日々奔走している。

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