羽生直剛が語るオシム。「僕はあの人にすべてを教えてもらった。偉大な人の伝道師になれたら...」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

「オシムさんが作ったチームの立ち上げからワールドカップまでを1試合にたとえるなら、もし前半で交代だよって言われたとしても、チーム作りという試合の前半に僕はプロとして参加したんだって、悔いはなかったと思います。

 とにかく自分が日本代表で何かに貢献したいっていう気持ちだったし、逆に言うと、足を引っ張れないなとも思っていました。その思いをモチベーションに変えていたっていう感じです」

 それは千葉時代に、オシム監督から学んだ思考でもある。

「オシムさんは、誰が先発だからどうとか、ベンチだからどうとかっていう考えではなく、チームとはっていうところをトータルで考えている監督でした。

 僕自身、ジェフにいた時に試合の途中で『おまえ、まだ大丈夫か?』って聞かれて、『大丈夫だ』って返したのに、僕のマークが外れてやられようものなら、『おまえ、やれるって言ったのにやれてねぇだろ!』みたいな(苦笑)。『やれないって言うのもプロだから。おまえが途中で疲れたからって交代したところで、オレはおまえの評価を変えたりしない』っていうことは言われていました」

 羽生は日本代表で17試合に出場したとはいえ、そのうち先発出場は2試合のみ。ほとんどが途中出場だった。

 しかし、「オシムさんは、先発だろうが、途中交代だろうが、必要があるから、おまえをこのチームに呼んでいるんだっていう感覚だったと思います」と理解する羽生にしてみれば、さして気にする必要もないことだった。

「オシムさんには全幅の信頼を置いていたというか、僕はオシムさんのために(プレーしよう)って思っていたので。

 もしあのまま(オシム監督が率いた日本代表が)続いたとして、監督というのは最後(ワールドカップ本番で)のメンバー選びに一番悩むんだとは思いますけど、『こっちのほうがいい選手だから、羽生を外すよ』って言われたとしても、やっぱりここに関われてよかったなって思わせてくれる監督だったと思います」

 そして、羽生はしみじみと続ける。

「ホントはワールドカップでオシムさんに(監督を)やってもらえたらうれしかったですね。今になって余計に思いますけど......、必ずいいサッカーでいい成績を収めてくれたと思います」

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