「この監督の言うことを信じていれば、世界に勝てるかも」今野泰幸がワクワクしていた日本代表とは (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 そんなことを尋ねると、今野は「うーん」と唸って、しばらく沈黙したあと、訥々と話し始めた。

「もしかしたら......、もしかしたらですけど、自分はやっぱりセンターバックじゃなくて、ボランチの選手なんだって思っているのかもしれないですね」

 困惑したように苦笑いを浮かべ、今野が続ける。

「その時(ザッケローニ監督時代)は、センターバックでも満足していたし、そこで使ってくれるのなら期待に応えたいと思っていたし、そこで成長したいとも思っていました。そのポジションで日本のトップになりたいとか、世界の選手にも負けたくないっていう思いもありました。そういう思いで、センターバックに誇りを持ってプレーしていたんですけどね......」

 2年ぶりに呼ばれた日本代表は、必ずしもまとまりのあるチームではなかった。だが、そのことが逆に今野に腹をくくらせた。迷うことなく中盤でボールに食らいつき、チャンスと見れば攻撃に加わる。割りきってプレーしたからこそ得られた充実感は、眠っていた本能を呼び覚ました。

「やっぱりどこかで、自分はボランチだ、という思いがあるのかもしれません」

(おわり)

今野泰幸(こんの・やすゆき)
1983年1月25日生まれ。宮城県出身。ジュビロ磐田所属のMF。東北高卒業後、コンサドーレ札幌入り。以降、FC東京、ガンバ大阪でも奮闘した。2005年の初招集以来、日本代表でも長きにわたって活躍。2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会とW杯にも2度出場している。国際Aマッチ出場93試合、4得点。

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