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「この監督の言うことを信じていれば、世界に勝てるかも」今野泰幸がワクワクしていた日本代表とは (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 今野がザッケローニ監督への信頼を口にするのは、単に長く一緒に過ごしたことだけが理由ではない。長い時間をともにするなかで、チームが形になっていく様子を目の当たりにできたからでもある。

「今でも覚えていますけど、ザッケローニ監督になって、すぐに攻撃の戦術をやったんです。でも、最初は『こんなのうまくいくのかな』って思っていたんですけど、毎回その練習をしていたら、その崩し方が試合で出るようになって。アジア最終予選とかでも、練習でやっていた形そのままで崩しきって点をとることも結構多かったんです。

『あー、こうやってチームって作っていくんだな』と思ったし、イチからチームを作り上げていく過程に関われたっていうのもあったし。『この監督の言うことを信じていれば、世界に勝てるのかもしれない』って思わせてくれました。やっぱりワクワクしましたよね」

 思い入れが強かったがゆえに、結末は悔やまれた。

「ワールドカップは短期集中の大会で、1試合でチームって大崩れしてしまうというか、追い込まれてしまうというか。あの初戦の、コートジボワール戦に、勝つのがベストではあったけど、最悪でも引き分けていれば......。初戦で負けたことによって急に追い込まれてしまって、自分たちのサッカーを見失ってしまった。

 チームって作り上げるのは大変だけど、なんかその......、崩れてしまうのは一瞬なんだなって、思わされた大会でした」

 最終的な結果は満足できるものではなかったとはいえ、ザッケローニ監督時代の日本代表を振り返る今野は、どこか楽しげだ。当時を語る言葉が、流れるように溢れ出る。

 自身がベストゲームに挙げたはずのUAE戦について語る時には、少しためらいを見せ、言葉を選ぶ様子を見せていたのとは対照的だ。

 ザッケローニ監督時代の日本代表には強い思い入れがあり、しかも印象に残る試合がいくつもある。それにもかかわらず、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代のUAE戦をベストゲームに選んだのはなぜなのか。

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