歴代日本人の「スピードスター」トップ10。野人・岡野雅行が選出、その定義とは? (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

6位 柳本啓成(元サンフレッチェ広島ほか)

 元日本代表で、サンフレッチェ広島などでプレーしたDFです。彼は僕と同じくらい速かったと思います。

 僕と柳本がドーハ組のあとに初めて日本代表に選ばれたんです。当時まだ22歳でしたけど、ラモス(瑠偉)さんや哲(柱谷哲二)さん、カズ(三浦知良)さんとか、あの恐竜みたいな人たちのなかにポンと入れられました。

 そのなかでも、僕ら2人はひと際速かった。だから先輩たちは「俺らこんなに遅いのかよ」って、みんな走りの練習を嫌がっていました。

 広島にはもう一人、佐藤康之さんというパンチパーマの速いDFがいました。後ろの柳本と2人が速くて、広島との対戦は嫌でしたね。でも同時に燃える相手でもありました。野人・岡野として、スピード勝負だけは絶対に負けちゃいけないと思っていましたから。

 僕はコナミさんの"ウイニングイレブン"が大好きでよく遊んでいたんですけど、ゲーム内のスピード能力の設定が、僕より柳本のほうが速かったんです。僕はそれに腹を立てていましたね(笑)。

 僕はアヤックスに練習参加した時に、あのババンギダにもスピードで勝っていますからね。彼は僕の速さに口を開けてびっくりしていました。たぶん初めて負けたんでしょうね。でもウイニングイレブンでは、僕よりババンギダのほうが速いんですよ。だから設定がおかしいって、いつか言いたかったです(笑)。

※ティジャニ・ババンギダ...90年代後半から2000年代にアヤックスで活躍した、ナイジェリア人の快速ウイング。スピードスターとして有名だった。

5位 前田大然(横浜F・マリノス)、古橋亨梧(セルティック)

 今の日本を代表するスピードスターの2人を同率にしたいと思います。久々にスピードがある選手たちが出てきましたね。2人の活躍は嬉しく見ています。

 前田選手のプレーとかを見ていると「そのタイミングね!」と、思うことがよくあります。攻撃の時はもちろんですが、スピードは守備においても最大の武器なんです。

 たとえば相手がボールを回している時に、横パスはスピードがある選手にとって大チャンスなんです。1人目にプレスに行って、横にパスを回されたら普通は追いかけませんよね。向こうだって来るとは思わない。でもそこでスピードのある選手は行くんです。そうすると相手はめちゃくちゃ焦ってミスをする。

 彼が2度追い、3度追いして相手のミスを誘ったり、ボールをかっさらうプレーを見ると、スピードを守備でも生かしているなと感じます。彼がスプリント回数でランキング上位を独占している状況を見て、羨ましいですよ。僕の時代にも計測してもらえていたら、結構な数走っていたと思います。走りすぎて試合後に全身つったりしてましたから。

 古橋選手も速さだけではなく、強さも兼ね備えていて、なおかつテクニックも非常にある選手ですよね。セルティックでも大活躍していますけど、代表でもあのスピードを最大限に生かしてほしいです。

 キャリアのなかでも、今が一番体が動く時だと思うので、難しいことは考えず、前田選手同様にシンプルにあのスピードを武器にして、攻守に活躍してほしいですね。

4位 永井謙佑(FC東京)

「もう僕みたいなタイプの選手は、あんまり出てこなくなってきたな」と思っていた頃に、ロンドン五輪での活躍を見て「これは野人が出てきたな」と。なんだか同じ匂いを感じました。

 その時のスポーツ新聞でも「野人2世」なんて書かれていて、野人なんて言われるのは嫌だろうなと思って、なんだか申し訳なくなってしまいました。それで一度本人に「野人なんて言われて嫌だろう、ごめんな」って謝ったんですけど、「全然そんなことないです!」と言ってくれました。

 そのロンドン五輪は、永井選手の速さが戦術になっていて、ボールを奪ってから一発で裏へ行けるのは、相手DFにとって本当に恐怖だったでしょうね。久々にスピードで興奮させてもらって、あれ以来、永井選手のプレーには注目しています。

 彼は初速からトップスピードに乗れる選手。サッカーの速さですよね。つまりボールがあったうえでの速さ。追いかけるなかでいろんなステップが入って、相手とどっちが先にボールに追いつけるか。

 ボールに追いつける最短距離を見極める選択があったうえでのスピードが、サッカーにおいての速さです。永井選手はその速さが抜群ですね。

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