森保Jはなぜ「アジアの横綱」らしい戦いができないのか。東京五輪の苦い記憶が蘇る (3ページ目)
最終予選は常に厳しい戦いであり、気を引き締めて試合に臨まなければならない――。森保監督はことあるごとに、そうした趣旨の話をする。その心構えが大事であることは言うまでもないが、同時にもっとどっしりと構え、相手を飲んでかかるような落ち着きもほしいところだ。
そうした余裕のなさは、指揮官の選手起用からも見てとれる。
常にベストメンバーをそろえて戦いたい。その気持ちは当然だとしても、海外組のコンディションがよくないのは、予想できたことでもある。
今回のように日本での試合の5日後にカタールで試合、という日程であれば、日本での試合は国内組を増やし、海外組の一部は日本に呼ぶことなく、カタールでの試合に備える。そうした二段構えの選手起用があってもいいし、それを可能にするだけの人材もそろっているのではないだろうか。
結果的にこの試合はアクシデントが重なり、DF冨安健洋、MF守田英正、MF南野拓実が出場しなかったが、裏を返せば"外的要因"でしかメンバーは入れ替わらないということでもある。
また、東京五輪に出場した海外組は昨季が終わって以降、シーズンオフの休養もほどほどに現在まで至っている。来年3月まで続く最終予選(ひいてはワールドカップ本大会)を見通した場合、時にメンバーから外す勇気も必要だ。DF酒井宏樹が疲労を考慮され、カタールへ向かうチームから離脱することが発表されたが、あってしかるべき判断だった。
そんなことに不安を覚えるのは、東京五輪での苦い記憶がまだ鮮明に残っているからだ。
ベストメンバーにこだわった結果、中心選手に疲労が蓄積し、最後はガス欠。結局、目標の金メダルどころか、銅メダルも逃した。開催期間も違えば、対戦相手のレベルも違うとはいえ、同じ失敗が繰り返されなければいいのだが......。
吉田が語る。
「ポジショニング、距離感、判断の遅さ、集中力とか、そういうのが全部ハマっていなかった。だが、そのなかでも(引き分けで)勝ち点をとるのが最低限(の結果)。失点してしまってはいけない」
横綱らしからぬ余裕のなさが、自らの首を絞める結果となった。
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