日本代表は「引いた相手を崩せなかった」のではない。どのようにオマーンの術中にはめられたのか
試合後、オマーンの選手たちは雄叫びをあげていた。カタールW杯アジア最終予選、敵地で日本を終盤の一発により0―1と撃破。喜びを爆発させ、抱擁を交わし、健闘を称え合った。
「歴史的な勝利に興奮しています。セルビアでの合宿からいい準備をしてきて、サプライズを起こすのが目標でした。『我々には失うものは何もない、得るものしかない』と伝えてきた」
オマーンを率いるクロアチア人監督ブランコ・イバンコビッチは、感情を抑え切れずに言った。
「選手には『ハイプレスを仕掛けよう』と戦術的な用意をしてきました。日本にとって、直近の(アジア)予選とは違う戦い方になるように。それで、びっくりさせられたと思っています。我々はそもそもパスを回すスタイルのチームですが、雨もあってリスクを冒さず、セカンドボールを拾う、ロングボールを適時に入れる、など微調整もできました」
オマーンは日本戦に向け、乾坤一擲で挑んできた。ただし、それは精神的なものだけでなく、論理的思考を突き詰めたサッカーだった。攻守一体で日本を凌駕した。
「引いた相手の守りを崩せなかった」
日本の監督、選手はそう総括したが、それは現象の説明であって、本質を語っていない。はたして、日本は足元をすくわれただけなのか?
オマーン戦で最後まで有効な手を打てなかった森保一監督この記事に関連する写真を見る 9月2日、大阪。日本はオマーンのハイプレスを受け、いつものようにボールを回せなかった。プレスを受け、ビルドアップにも四苦八苦。しばしばボールを失い、ショートカウンターを浴びるなど、完全に術中にはまっていた。
相手がリトリートした状況では、日本はボールを持てた。しかし、有効な崩しはできていない。サイドチェンジから単純に裏を狙うだけで、相手に読まれてスペースを消されていた。パスのリズムが上がらず、ギャップも生み出せない。相手を押し込んで連係からサイドを崩すなど、引いた相手を攻める工夫が乏しかった。
「ひとつは相手のコンディションが良かった。もうひとつはクリエイティビティが欠如し、いつものようなパス回しができず、ボールが走っていなかった。疲労からか、テンポも距離感も良くなくて......」
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