日本代表選手の意識は2000年アジアカップ優勝後に大きく変わった (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki

 一度ははね返すも、セカンドボールを拾われ、防戦一方。ベンチの山本は、鬼神と化した背番号1が次々とサウジのシュートを弾き出す様を、アトランタ五輪の記憶と重ね合わせながら見つめるしかなかった。

「能活さまさま、でしたね。あいつに何回救われたか。あんなセーブを何本も......、でも、能活にとっては、あれが普通だったのかな(笑)」

 この大会、日本は必ずしも楽な試合ばかりを勝ち上がってきたわけではない。先制され、逆転され、苦しい展開もあったが、その都度、底知れぬ力を見せつけ、勝利をもぎ取ってきた。

 もはや負ける気がしない――。選手たちに、そんな自信が芽生えていたとしても不思議はなかった。

 しかし、名波は「若い選手たちはそうだったかもしれないけど、オレはやっぱり、あいつらに比べたら小心者だから」と言って笑い、「いつかひっくり返されるんじゃないかという気で、体を投げ出して(守備をして)いたよ」と、当時の心境を明かす。

 そして明神もまた、余計なことは考えず、ただ一点だけに集中していたという。

「とにかく守備ですね。ゼロで抑えていれば負けないし、ボランチの自分は攻撃の部分でどうこうよりも、ゼロで抑える。それだけを考えていました」

 はたして、ベイルートの夜空に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響く。日本は追加点こそ奪うことができなかったが、無失点でしのぎ切った。

 1-0。日本が2大会ぶり2度目のアジア制覇を成し遂げた瞬間だった。

アジアカップで2度目の優勝を飾った日本代表。photo by REUTERS/AFLOアジアカップで2度目の優勝を飾った日本代表。photo by REUTERS/AFLO

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