なぜ今、日本女子サッカーの新プロリーグ創設が決まったのか? (4ページ目)
ほかにも、いくつもの柱がWEリーグを支えていく予定だ。例えば、女性スポーツ医学関連の企業や教育機関と連携することにより、投資を得るという手法のもそのひとつ。選手たちのデータを、医学や科学、栄養学などの発展に生かすというものだ。国内ではまだ途上であるこの分野を向上させるという意味でも、相乗効果を期待できる。
さらに、政府が課題にしている「女性活躍」の場を広げることも、視野に入れている。この点に関しては、日本が世界から遅れを取っているのは周知の事実だ。「男性がやっているサッカーというものを自分たち(女性)もやってみたい」というところから始まった女子サッカーは、この点で非常に象徴的な存在と言える。また、そこから「女性活躍」の旗振り役を担う意図も明確に見て取れる。
これらの取り組みを成功に導くためには、ブランディングが何よりも重要だ。そして、その基本になるのが選手たちだ。
プロ化とは、単に選手たちがプロ契約をすることではない。パフォーマンスをする選手やリーグ自体の価値を高めて、それを社会に還元することも、プロとしての活動には重要な要素となる。
ただ、サッカー一本になってしまうと、どうしても社会性の欠如に陥りやすいという側面もある。現在の女子サッカー選手たちの大半は、活動に理解のある企業で働きながら練習や試合を続けている。ここをもって「サッカー環境が整っていない」と指摘されることも多いのだが、その反面では、雇用されることにより選手たちが自然と社会性を身に着けているのも事実だ。
「プロ化は、女子サッカーの発展にとって大きな一歩です。ただ、働きながらサッカーをすることで学べることもたくさんあるということも、実感としてあります」
そう語る菅澤優衣香(浦和レッズレディース)の言葉は、大いに頷ける。菅澤がなでしこリーグで活躍しながらこのような自覚を持っているのは、彼女を支える周りの環境による賜物と言ってもいいだろう。この視点や環境をWEリーグは的確にカバーしていく必要がある。
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