競争激化の日本代表の中盤。福田正博がハッパをかけたいMFは? (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 現在の世界最先端のサッカーはトランジション、つまり「攻守の切り替え」がさらに重要になり、中盤の自陣でも相手から強いプレッシャー受けるようになっている。そのため、中盤の選手はフリーで攻撃の起点となるパスを出せなくなってきており、代わりにその役割をセンターバックが務めるようになっている。

 この3列目の選手に求められる役割は、自陣から敵陣までのペナルティボックスをプレーエリアにする『ボックス・トゥ・ボックス』の動きだ。この3列目のポジションを日本では「ボランチ」「守備的MF」「アンカー」「セントラルMF」などと表現するが、現在は守備と攻撃の組み立てだけをしていれば評価されるポジションではなくなってきている。

 そして、W杯ロシア大会後にイビチャ・オシム元日本代表監督が、日本代表が世界トップ8以上を目指すために欠けているものとして指摘したのも、この『ボックス・トゥ・ボックス』の動きだった。

 中盤のプレースタイルの世界基準は、ボールを持ち、縦パスを入れたら前線の選手を追い越して相手ゴール前に飛び出していくという『エネルギッシュ』な動きができること。これがあることで、相手DFの陣形は崩れ、トップや2列目の選手たちがゴールに直結するプレーができる時間とスペースが生まれる。

 相手陣でボールをロストしても、攻め上がった3列目の選手が前線から激しくボールを奪い返しに行けるメリットもある。これが現代サッカーでトランジションが重視されている理由のひとつだ。相手陣でボールを奪われれば、相手は攻撃に転じようとポジションを攻撃に切り替えるが、その時、即時回収、つまりすぐに相手陣でボールを奪い返せれば、相手守備網は揃っていないために、得点機になる可能性が一気に高まる。

 柴崎にはこの動きがまだ少ない。所属クラブで出場機会を多く得られないのも、こうした動きの質を物足りなく思われている面もあるのではないか。柴崎がステップアップしていくためには、自らの特長を生かしながら、この能力を伸ばしていってほしい。

 もちろん、柴崎と同時に起用する3列目の選手を前線に飛び出していくタイプにする手もあるが、その場合、柴崎は守備力を現状より高めることが必要になる。

 柴崎の課題をクローズアップするのは、彼の成長が、日本代表が強豪国と肩を並べるためには不可欠なものだからだ。あれだけのポテンシャルを持ち、志も高く、経験値もあって、年齢的にもベテランと若手の中間に位置する。柴崎には、もっと突き抜けた存在になって名実ともにチームの中軸になってもらいたい。

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