福田正博のアジアカップ総括。「森保Jには優勝以外の目的があった」 (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Fujita Masato

 188cmの冨安のよさは、高さを生かした空中戦だけではない。対人の強さに加えて、アジリティ(俊敏性)や足元の技術も高い。なによりプレーの先を読む力が秀でている。ボールが出てくる場所を予測する能力が高いからこそ、早めに動き出していいポジションを取れる。だからこそ、経験値が求められるCBにあって、弱冠20歳ながらも落ち着きのあるプレーでチームに安心感を与えられる。

 攻撃面でも冨安は高いレベルにある。セットプレーでのターゲットとしてはもちろんだが、ビルドアップでも目を見張るものがある。ボランチにマークがついているときに、CBがドリブルで持ち出すことができないと、攻撃は手詰まりになるが、そうしたときに冨安はゆっくりとボールを中盤に運びながら、精度の高いパスを入れていく。CBは相手にボールを奪われたらピンチを招くポジションなだけに、足元の技術、広い視野の確保、スピードなどを備えていないとできないことだ。

 冨安がさらに成長していくには、経験値を高めていくことが欠かせない。自分の予測を超える動きやスピードを持つ選手と数多く対峙し、守備の対応の引き出しを増やしていく。そのためには、現在プレーするベルギーから、さらに上のリーグへステップアップしていくことに期待したい。

 一方、日本代表の課題に目を向ければ、「大迫への依存」、「戦術的な幅」、「選手の自律と対応力」がある。

 大迫勇也(ブレーメン)の存在は、彼がいなければ日本代表の攻撃が機能しないほど大きい。日本代表には2列目にアジリティとスピード、技術力の高い選手がいて、彼らを活かせるかどうかはCFの力量にかかっていると言っても過言ではない。実際、カタール戦では相手に分析されて、大迫を抑えられてしまうと攻撃は機能しなかった。

 ポストプレーというと長身選手を思い浮かべるかもしれないが、大迫は182cm。高さと強さを備えているに越したことはないが、大切なのは体のサイズではなく、190cm以上の屈強なDFを相手にしてもボールをおさめる技術を備えているかどうかだ。

 ボールを失わず、起点になって時間をつくることで、2列目の選手が攻撃に加わることができ、相手DFを引きつけることで味方のスペースも作り出す。守備でもDFラインが弾き返したボールを中盤でおさめてタメを作ることができれば、ゲームの流れを変えることができる。

 大迫はドイツに渡ってポストプレーを磨いてきた。CBに冨安が現れたように、多くの若手が大迫のようにFWとしての能力を高めることにチャレンジして、頭角を現してもらいたい。

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