福田正博は考える。日本人はロングボール戦術を採用すべきか?
ロングボールを放り込むか、ショートパスをつないで攻めるか。そうしたスタイルや戦い方が議論の的になることも多いのが、サッカーというスポーツ。今回は、ロングボールの是非について、福田正博氏が自らの考えを述べた。
日本代表でもJリーグでも、対戦相手にリードを奪われ追いかける展開になる試合では、終盤になると、『ゴール前にロングボールを入れろ』という意見がある。もちろん、実際にそうした戦術を採るチームは少なくない。先日のアジアカップ準決勝で日本が対戦したイラン代表をはじめ、終盤にロングボールを前線に放り込む戦術を採ったチームもある。
今回は「ロングボール」や「放り込み」とも言われる戦術について検証したい。まずはその意図と効果について考えてみたい。
言うまでもなくサッカーの目的は「勝つこと」で、そのためにはゴールを決めなければならない。チャンスをつくるには、「ボールをどうやって相手ゴール前に運ぶか」が重要だ。"ロングボール""ポゼッション""ドリブル突破"などは、そのための手段に過ぎない。
どの手段を採るかの判断は、より高い確率で相手ゴール付近にボールを運べるかどうか。また、終盤にリードを奪われている展開では、ロングボールを狙った場所へピンポイントに蹴る能力の高い選手と、高さと強さを持つ選手がいれば、もっとも確率の高い手段になるだろう。
W杯ロシア大会ではベルギーの高さへの対応に苦慮した日本代表 わかりやすいケースが、W杯ロシア大会で日本代表が敗れたベルギー代表だ。ベルギーのスタメンで180cm以下だったのはエデン・アザール173cmと、ドリース・メルテンス169cmのふたりだけ。ベルギーは2点を追う展開になると、空中戦を仕掛けるためにロングボールを多用し、ヤン・フェルトンゲン(189cm)の1点目と、マルアン・フェライニ(194cm)の同点弾を生み出した。
ベルギー代表はやみくもにゴール前に蹴っていたわけではなく、高さで劣る日本に対して、自分たちのアドバンテージを最大限に活かすために、ロングボールを素早くゴール前に入れることを選択したのであり、非常に理に適った判断だった。
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著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。