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福田正博は考える。日本人はロングボール戦術を採用すべきか? (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

 実際、U-21日本代表で臨んだ昨年8月のアジア大会では、ピッチ状況が悪いにもかかわらず、DFラインが自陣からつなごうとしたパスを奪われて失点を喫している。こうしたリスクを避けるための手段としてもロングボールは選択肢として持っておくべきと言える。

 次に、試合終盤のロングボールの有効性がどこにあるかを考えたい。よくあるパターンが、さきほどのW杯での日本対ベルギーでのベルギー代表のように、前線にいる長身の選手をターゲットにして、空中戦での競り合いからのヘディングシュートや、味方に落としてシュート機会をつくるというものだろう。

 終盤は選手たちのほとんどは疲労が蓄積し、集中力が低下して、ロングボールの軌道を追うために相手選手の動きから目を切るため、ゴール前に放り込むことでアクシデントが起きる可能性もある。

 ただし、簡単に相手ゴール前に放り込むということは、相手ボールになる確率が50パーセント前後あるということ。相手ボールになれば、再びボールを回収しなければならず、終盤の疲労が溜まった状態でプレスをかけて再びボールを奪い返さなくてはいけなくなる。

 同時に、ロングボールを使う狙いは、ゴール前での空中戦だけにあるわけではない。前線に長身の選手が入れば、相手守備陣は警戒してDFラインを下げ、DFラインが下がれば攻撃側はバイタルエリアにできたスペースに侵入しやすくなり、得点機が生まれる。これもまた、ロングボール戦術の活用方法と言える。

 高さのある選手を前線に置いて、数本のロングボールを入れて相手のDFラインが下がれば、次はロングボールを使わずにポゼッションしてパスをつなぎ、ペナルティエリアに侵入して崩すという狙いだ。

 川崎フロンターレは、風間八宏監督(現名古屋)時代も徹底的にパスをつないで相手を崩していくスタイルだったが、当時のある試合で、終盤のビハインドを跳ね返すために風間監督が前線に長身選手を配置したことがある。これはまさに、相手にロングボールを警戒させてDFラインを下げさせる狙いがあった。そしてこの時の川崎は、ロングボールを蹴ることなく、相手守備ラインが下がってバイタルエリアにできたスペースを使ってパスをつないで崩していった。

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