前園真聖は確信。西野さんはアトランタ五輪の悔しさを忘れてなかった (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 前園の提言にも守備的な戦術を変えなかった西野監督に、とりわけ憤慨していたのは中田英寿だった。激しい怒りを西野監督にぶつけ、試合中も「前に来いよ!」と後方の選手たちを怒鳴り続けていた。

「ヒデの気持ちはよくわかる。後半もチャンスを作れていたし、誰かひとりでも積極的に攻撃に絡んできてくれたら、点は取れたと思う。

 でも結局、最終的にはDF陣のミスと、ヒデが相手を抑えたプレーがPKを取られて、2失点して負けた。相手に崩されたわけじゃないし、もう少しみんなが攻撃的にいっていれば勝てた試合だったので、ほんと悔しかった」

 グループリーグ最後のハンガリー戦は、決勝トーナメント進出のためには、勝利が必須の試合となった。ナイジェリアが2勝でトップに立ち、日本とブラジルが1勝1敗で並んでいたからだ。

 一方の試合、ブラジルvsナイジェリアは、ブラジルが勝つ可能性が高かった。日本がハンガリーに勝った場合、勝ち点6で3チームが並んで、得失点差の勝負になる。試合前の得失点差は、日本がマイナス1、ブラジルがプラス1。日本がブラジルの上に行くには、できるだけ多くの得点を奪って勝たなければいけない。西野監督は「攻めて勝つぞ!」と、攻撃的なサッカーでいくことを選手たちに命じた。

「あの大会で初めて、みんなで点を取りにいこうと意思統一された」

 この時を待っていたとばかりに、前園のテンションは上がっていた。だが、なぜかスタメンには中田の名前がなかった。

「(先発メンバーに)ヒデがいないのはびっくりした。『(前線には)俺と城(彰二)しかいないじゃん。どうやって点を取るんだよ』って思ったけど、ヒデを(メンバーに)戻してくださいとは言えなかった。選手起用については、選手があれこれ言ってはいけないので、そう思っていても言わなかった。これはもう、俺が点を取らないといけない。『やるしかねぇ』と思いました」

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