身体と心を蘇らせた広島・青山敏弘「変わっていく自分にびっくりした」 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi
  • (株)サンエス秋田耕二●撮影 photo by Akita Koji

―― オフに「自分のことはあまり考えてなかった」という気持ちはわかるんです。青山選手はこれまでもチームと向き合ってきたし、人一倍責任を背負ってきたと思うので。だけど、「自分にあまり期待してなかった」という言葉は驚きました。なぜ、自分に期待できなかったのか......。

青山 2015年に優勝したあと2016年、2017年と2年間やってきて、ここまで動けなくなるのか、っていうくらい身体が動かなかったし、ボールを蹴ることすらダメで......。プロ選手として失格だろうっていうくらいパフォーマンスがひどかった。それが本当に苦しくて。それでも試合に出ていたから、その葛藤があって......。昨年、チームの足を引っ張ったのは間違いなく自分だと思っているし、それに対して、周りは何も言ってこない。周りに気を使わせてしまっていたんです。

―― それも苦しかった?

青山 うん。だから今年もダメなら......っていう覚悟はしていたし、自分が退いて新しい広島がつくれるなら、それでもいいと思っていたし。

―― チームが新しくなって好転していくなかで自分の場所がなくなるなら、それも仕方ないというか......。

青山 そうなるべきだと思ったし、若い選手たちが活躍するなら、その手助けになりたいなと思ってシーズンに挑んだんです。

―― そうした覚悟で臨んだなかで、城福監督と池田コーチがやって来た。池田コーチにすべてを委ねてみよう、この人にかけてみようと思ったきっかけはありますか?

青山 人間性ですね。チームが始動してすぐにタイキャンプに行ったんですけど、毎晩、メディカルルームに池田さんがやって来て、僕がマッサージを受けたあと、身体のこととか、チーム状況とか、これまでどう苦しんで、どういう想いをしてきたのか、聞いてくれたんです。毎晩話し込んで、それがすごく楽しくて。

 池田さんも体験談を話してくれて、たとえば、(横浜F・)マリノス時代に誰々がどうだったとか、マリノスが優勝したとき、チーム状況はどうだったとか。自分も優勝経験はあるし、この2年間うまくいかない経験もしたから、池田さんの話がスッと入ってくるんですよ。なんだろう......グチャグチャに絡まっていた紐を1本ずつ、解きほどいてくれるような感覚があって。

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