ハリルJの哀愁。明るい未来も、誇れる過去も、帰るべき場所もない (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 機能不全は、攻撃もまた然り。単調なパス回しを続けるばかりで、しかも選手同士の動きが重なるケースも多く、スピードアップして相手ゴールに迫ることができなかった。

 試合終盤、マリの若い選手たちが自己アピールを焦ったのか、それまで規律を持ってプレーしていた"仮想セネガル"が大味な打ち合いに出てきてくれたことで、日本は攻撃機会を増やし、FW中島翔哉のゴールで同点に追いついた。

 だが、見るべきものがほとんどなかった試合を、A代表デビューとなる23歳の初ゴールひとつで帳消しにするのは無理がある。たとえアシストしたのが、21歳のMF三竿健斗だったとしても、だ。

 いつもは自信に満ちた言葉を次々に発するヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、さすがにこんな酷(ひど)い試合のあとではしばし言葉を失い、「何を言えるのかな、という試合。まだ深い分析には入りたくない」と語ると、「まだまだやるべきことがある。かなりたくさんある」と何度も繰り返した。

 確かに「先発させたい選手が3、4人いなかった」(ハリルホジッチ監督)という事情はある。DF吉田麻也、DF酒井宏樹、MF香川真司らをケガで欠き、試合中にも、MF大島僚太が前半途中にして負傷交代となる誤算が起きた。

 ハリルホジッチ監督が「2列目から速い攻撃を仕掛けられる選手。(交代するまで)しっかりと組み立てに関わっていてよかった」と評した大島が、最後までピッチに立っていたら、試合はどうなっていただろうか。そんな想像もしないわけではない。

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