北澤豪が「これだけは許せなかった」という岡田監督の裏切り采配 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 北澤がグアムにいるとき、日本代表がW杯初戦のアルゼンチン戦を迎えた。北澤は試合を見ないようにしようと思っていたが、気になって仕方がなかった。グアムでは試合が放送されることもなく、なおさら気になった。それで、つい日本に電話して「テレビの近くに電話を置いてくれ」と頼んで、実況を聞いた。

 その姿を見ていた妻が、北澤にこう言った。

「だったら(日本に)帰ろうよ」

 フランスW杯での日本代表の戦いが気になる――そんな自分の気持ちに嘘はつけないことを悟った北澤は、すぐに帰国。その足で、ヴェルディの福井キャンプに合流した。

 3戦目、ジャマイカ戦が始まる前、北澤はひとり、部屋に閉じこもっていたという。

「試合を見ているとさ、いろんなことをつい言ってしまいそうなんでね。みんなが俺の部屋に来て一緒に(試合を)見ようとするんだけど、『頼むからひとりにしてくれ』って言って、ひとりでジャマイカ戦が始まるのを待っていた」

 自分はメンバーから外れたとはいえ、W杯に挑んでいるのは一緒に戦ってきた仲間だ。思い入れの強いW杯で、そんな仲間たちの雄姿を見逃すことはできない。北澤は、実力的には勝てる相手ゆえ『是が非でも1勝してほしい』と思って、祈るように見ていたという。

 ジャマイカ戦が始まった。北澤はひとり、テレビ画面を食い入るように見つめていた。そして、試合が後半を迎えると、信じられない光景が目の前に飛び込んできた。

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