ヒデと福西の言い合いが象徴する混乱。「ジーコは何も言わなかった」 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 イラン戦は前半25分に先制点を奪われ、1点を追う形で後半に入った。

 このままズルズルと終わってしまうと、次の試合にも影響する。選手たちは大きな声で自らを鼓舞し、気持ちを入れ替えてプレーした。

 そして後半21分、左サイドでスローインを受けた中田が中央へ浮き球のクロスボールを送った。そのボールが競り合いからこぼれたところを、ファーサイドからスーッと中に入ってきた福西がダイレクトで打ち抜き、見事な同点ゴールを決めた。

 その瞬間、福西に一番で飛びついてきた選手がいた。

ゴールを決めた福西崇史に飛びつく中田英寿。photo by YUTAKA/AFLO SPORTゴールを決めた福西崇史に飛びつく中田英寿。photo by YUTAKA/AFLO SPORT

「ヒデでしょ。あの瞬間、ヒデは本当に喜んでいた。

 でも、あのゴールはもうイチかバチかですよ。クロスボールが上がったとき、(中にいた)ヤナギ(柳沢敦)には相手DFがしっかりついていた。FWの選手って、負けると思うと競らない人がいるけど、そのときは競ったら絶対にこぼれてくると思った。もちろん競らなければ、クリアされてカウンターを食らう。だから、ヤナギに『競れ!!』って叫んだ。そうしたら、やっぱり(ボールが)こぼれてきた。

 ああいうときは、やっぱり言わないとダメ。それに点は、ある程度リスクを負わないと取れないからね。まあ、いろいろな経緯があってのゴールだったので、個人的にもうれしかった」

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