2016.02.10

海堀あゆみが引退の理由を語る(後編)「どんなことにも意味がある、絶対に」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 現役中、引退後を含めて、かたくなに口を閉ざしてきた海堀があえて今回、斜視で物が二重に見える症状のことに触れたのにはある強い想いがあるからだった。(前編はこちら)

引退を発表していた澤穂希のために戦ったという皇后杯。見事優勝で有終の美を飾った「いろんなことが起きる可能性は誰にでもあると思うんです。でも、どんなに苦しい状況でも一度自分で受け入れないと何も始まらない。自分も受け入れてなかったらヒステリックにサッカーしていたかもしれないし、目の症状が出たせいでサッカーをやめることになったと言い訳にしていたかもしれない。受け入れた上で何をどうするかが大事。自分はいろんな人の助言やサポートがあったから現実を受け入れられた。だからすべての出会いに感謝しています」

 さらには斜視の症状が出たこと自体は、大きな壁ではなかったと言い切った。

「そこはちゃんと立ち向かってクリアしてますから(笑)。要はそこから頑張れるかどうか、なんです」

 一度はどん底に突き落とされたが、自らの感覚を養うことでその壁を取っ払った海堀だからこそ、その言葉には重みがある。

「人ってエゴがある。見えるようになったらせっかく身につけた察知力が鈍ってくるんですよ(笑)。何かを得れば、何かを失うし、その逆もある。そういうジレンマもありました」

 もちろん、第一線ではなく、できる範囲で現役を続けるという道もあった。そこを選択しないところがまた海堀らしい。

「移籍してまでできるモチベーションがあるなら、どこでもできます。違う道を選べば楽しくはできるかもしれないけど、プロとしてサッカーをするならばやっぱり厳しさを求めてしまうんですよね」