2016.02.09

なでしこGK海堀あゆみ、引退の理由を語る(前編)
「信条に反することはできない」

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

「海堀あゆみ現役引退」――この突然の発表は女子サッカー界に大きな衝撃を与えた。

引退の理由について真摯に語った、元なでしこの海堀あゆみさん 2011年、ドイツワールドカップ(W杯)決勝のPK戦で見せたビッグセーブを記憶している人も多いだろう。この大会はまだまだ未熟だった海堀を大きく成長させた。その後、ロンドン五輪、カナダW杯ともに準優勝と、なでしこジャパンが積み上げた歴史とともに歩んできた海堀が、今年1月に突然引退を発表した。

「ドイツW杯がピークだった」のか、「カナダW杯決勝での大量失点が尾を引いた」のか、果てには「澤(穂希)ロス」とまで囁かれ、引退の理由について多くの憶測が飛び交った。しかし、そのいずれでもないことは、海堀が乗り越えてきたこの2年間が証明している。感情表現が得意ではない彼女が丁寧に紡ぐ言葉には、プロとしての誇りと覚悟、そして感謝が溢れていた。

「自分でもスッキリしてるなって感じます(笑)」

 引退の決意を固めてから1カ月、海堀は言葉通りの表情を浮かべていた。決して平坦な道のりではなかったが、29歳までそのすべてをかけてきた世界から身を引く、という決断は簡単にできるものではない。何度も気持ちは揺らいだ。”もし、こうしたら”、”でも、ああすれば……”。引退という結論を何度も熟考する日々が続く。決意に至った理由は数多くあるが、その根底にあったのは、海堀自身の描くプロ像と、揺るぎない信条だった。