海堀あゆみが引退の理由を語る(後編)「どんなことにも意味がある、絶対に」 (4ページ目)
あのときの彼女の言葉には強い願望が混じっていたが、今の海堀の言葉には確信がある。彼女の変わらない想いを見た気がした。ともすれば逃げ出したくなるような状況でも、常に自分と向き合い、甘えを許さず、己を律する。どこか危なげでそれでいて繊細すぎるほど不器用。決して自分をごまかすことはしないGKだった。
「目が改善されて納得しているけど、もしかしたらボールが2個見えていた方が感覚的にはすごかったから、それの方がよかったという人もいるかもしれない。自分にとっての正解は自分で見つけるしかない」
何を良しとするかは自分次第。十人十色の問題があって、人それぞれに正解がある。だからそれは自分で見つけなければならない。
「いろんなすごい人がいるから、学ぼうと思って頭でも考えようとした。でも目のことがあって、『お前は感覚なんだよ』って言われているのかなって思いました。自分らしく吹っ切れた気がします。今は自分で引き際を見つけることができてよかったと思っています」
引退に至る多くの理由の根底でつながっていたのは、海堀の信条を貫くことができるか否かという、実にシンプルではあるが揺らいではならない信念だ。
「そこだけはどうしても曲げることができなかったですね......」
毎年やってくる壁を、信念を持って超えることができない現実を受け入れたとき、海堀は引退を決意した。そして"味方のミスをミスにしない"という生き方――今後もきっと海堀はこの言葉のように歩みを進めていくのだろう。それも実に彼女らしいと私は思う。
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