天敵イラクを倒してリオ決定。植田直通が晴らした3年2カ月分の悔しさ (5ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 4年前の11月、イラクに敗れた植田は、もはや悔しさを通り越し、怒りにも似た感情を抱えていた。

 他の選手にしても悔しくなかったはずはないが、傍目にはどこか淡々として見え、意外なほど感情は伝わってこなかった。

 だが、彼だけは違った。試合に出てもいなかったのに、背中からは湯気でも立ち上ってきそうなほど、怒りのオーラが発せられていた。

 この感情がきっと日本を強くする――。わなわなと震える植田の背中を見て、そんなことを思ったものだ。

 あのときとはまったく違う、穏やかな表情の植田が語る。

「五輪出場をかけたこの戦いでイラクと対戦することに、すごく縁も感じていた。みんなもすごく悔しい思いをしてきたし、ここで負けるわけにはいかなかった。その思いで、みんながいいプレーをすることができて、この勝利につながったと思う」

 世界はおろか、アジアでもベスト8の壁を破れずにきたリオ世代。必然、今回の最終予選を前にしても評価は低く、リオ五輪の出場権獲得は危ぶまれた。

 しかし、イランに勝って鬼門の準々決勝を突破すると、ついには一度も勝てなかった因縁の相手、イラクを初めて倒して世界への扉をこじ開けた。

 怖いくらいにやることなすことうまくいく、今大会にふさわしい最高の復讐劇で、日本は6大会連続となる五輪出場を決めた。

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