田口泰士「日本代表に選ばれ、地元沖縄の人が見てくれた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Sueishi Naoyoshi

 前日は清水エスパルス戦で、名古屋は2-2で引き分けていた。1人退場で10人になっが、ドローでOKという気分にはなれなかった。捉え方は人それぞれだろうが、田口は勝利だけを求めていた。

 試合後は声が嗄(か)れてしまい、うまくしゃべれなかった。試合中、叫び続けていたからだ。チームメイトにのど飴をもらい、名古屋に戻るバスの中で10個以上はなめ続けた。ハッカ味、口の中がスースーしてのどの痛みは治まった。しかしなめすぎたのか、気持ち悪くなった。普段は屈託がない若者だが、"目の前の試合に勝ちたい"という欲求は誰よりも強い。

 その田口は2014年の夏、サッカーがつまらなくなりかけていた。

<昔は楽しかったなー>

 数ヵ月前から田口は心の空洞を感じるようになった。プロに入り、所属クラブでデビューし、先発の座をつかんだ。しかし中高生のときのような高揚感を得られなかった。

「サッカーが仕事になって......。『サッカーを仕事にしてお金を稼げていいですね?』なんて周りに言われるんですけど、仕事だから人に評価されるし。いつどうなってもおかしくないんですよ。そのプレッシャーを感じていたということかもしれないけど、しばらくは試合でも気持ちが乗っていなかった。それで客観的に自分を振り返ってみたんです。オレがいいプレイしていたときは、すごく楽しんでいるんですよ。ゴールをするとか、狙ったところに蹴れてるとか。一番は自分中心に攻撃を動かしているとき。オレ発信のワンツーで味方を動かしながら、連係を続けてどんどん攻撃を作り出すみたいな」

 田口は一息ついてから、告白を続ける。


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