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田口泰士「日本代表に選ばれ、地元沖縄の人が見てくれた」 (5ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Sueishi Naoyoshi

「中2か中3のときだったと思いますけど、オシムさんがいた代表に我那覇さん(沖縄出身で、現在はJ2のカマタマーレ讃岐に所属する)が入ったとき、沖縄の人はみんな注目していました。やっぱり地元の選手は気になるんですよ。自分も日の丸を背負うのが夢になったし、自分が代表でプレイしていると見られている、というのは感じますね……まあ、そんなに期待しないで見守って欲しいんですけど」

 田口は白い歯を見せて笑った。彼は彼のテンポで生きるのだろう。町中を歩いていると、若い男性二人組に呼び止められた。

「サッカーの田口さんですよね? 写真撮ってもらっていいですか?」

 彼は喜んでそれに応じた。

「今だけだろうな」

 撮影後に、彼は小声で洩らす。自嘲しているのではなく、達観しているのだろう。

――海外挑戦を考えているの?

 そう尋ねると、彼は首を横に振った。

「まったくないです。グランパスでずっとレギュラーで試合に出られれば、オレはそれでいいですね。新しい環境に入って、一からスタートなんて面倒。グランパスでタイトルが取りたいですよ。今は同期や年下の選手と出かけたり、『頑張ろうな』と励まし合ったりしているときが、“悪くないな”と思えるんですよ」

 人間は環境の中で変わっていく生き物だ。だから、いつか唐突に野心が芽生えることもあるかもしれない。しかし、今の田口にとっては見渡せる風景がすべてなのだろう。

「ココイチ(カレーハウスCoCo壱番屋)にはよくチームメイトと行きますね。タマゴサラダとチキンにこみカレーで、トッピングにほうれん草と納豆。オレのオーダーはこれが基本です!」

 沖縄から来た若者は、まるでその店のCMキャラクターのように快活に笑った。

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