迷走を始めたアギーレジャパン、最大の責任者は誰か (3ページ目)
浅田 語弊があるかもしれないけど、個人的にはアジアカップは負けてもいいと思っている。あくまでも4年後のW杯が最大のターゲットであって、アジアカップはそのための一里塚に過ぎない、という発想があってもいいと思う。そのうえで、アジアカップでは4年後を見据えた若手に国際経験を積ませる、というスタンスで臨むのもあり。でも、その方針が見えない。それは、監督というよりも、むしろ協会の問題。
一戦必勝に走るメディアが代表をダメにする
――結局のところ、アジアカップの位置づけをはっきりさせていないから、アギーレジャパンに対する世間の風当たりが強くなって、アギーレ監督もブレてしまった、ということでしょうか。
杉山 アジアカップは、あくまでも4年後のW杯のための強化、ということであれば、世間が納得するかどうかはわからないけど、アギーレ監督は存分にテストを続けられたと思うからね。いずれにしても、協会がアジアカップの位置づけをしっかりとアナウンスしないのはいけない。
浅田 根本的な話、W杯と同様に、アジアカップでも結果を求めるならば、僕は代表の監督交代のタイミングも考えるべきだと思っている。就任して半年後に結果を求めるのは酷な話だからね。本来、そういう話もあってしかるべき。
――協会はなぜ、アジアカップの位置づけをはっきりさせられないのでしょうか。
中山 問題はマスコミでしょうね。日本代表は、テレビ、新聞、雑誌、あらゆるメディアにとって、優良なコンテンツ。特にテレビは、自分たちが中継する試合で「テスト」などと謳われたら、たまらない。視聴者の関心が薄れてしまうし、スポンサーがつかなくなってしまう可能性がありますから。そうすると当然、メディアは結果を求めて大いに盛り上げる。協会もそうしたメディアに支えられているから、はっきりとモノが言えないのではないでしょうか。だから、アジアカップの位置づけを明確にできず、表向きは「結果にこだわる」と言ってしまうのでしょう。おかげで、日本代表の試合はすべて、「勝った」「負けた」という話が前面に出て語られてしまう。もし勝ちたいだけなら、格下と毎回ホームで親善試合をすればいいっていう話ですよ。でも、そんなことをしていたら、W杯では勝てるわけがない。実際、それに近いことを日本は繰り返しているから、W杯で勝てないという歴史がある。もちろん我々も自戒しなければいけませんが、そのことをメディア全体が、そろそろ真剣に考えたほうがいいと思いますけどね。
杉山 この前もテレビを見ていたら、スポーツニュースのキャスターが「ここまで、アギーレジャパンは4試合でわずか1勝。今度の試合は絶対に勝たなければいけない」と伝えていた。あれには、愕然としたね。4試合の結果に何の意味があるのかって。そんなに勝たせたかったら、相手はどこでもいいのか、って言いたかったよ。本当は強いチームとアウェーで試合をして、それで強化を図ることが大事。結果は二の次で、勝敗は五分であれば十分。にもかかわらず、日本のメディアは親善試合の勝敗だけを伝えて、それで勝ち越しているから「強い」といった評価をしてしまう。それで、失敗したのが、ザックジャパン。親善試合でどれだけ勝とうが関係ないのに、4年間の戦績だけを見て、選手も、メディアも、ファンも勘違いしてしまった。ブラジルW杯の敗因は、そこにもある。
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