迷走を始めたアギーレジャパン、最大の責任者は誰か (2ページ目)
杉山 結局、10月のブラジル戦(0-4)で思いっ切り負けちゃったでしょ。あの結果、多くのメディアを含めて、世論がかなり批判的になった。それで、アギーレ監督も世の中を敵に回したくないから、11月にはブラジルW杯組をさらに招集して、世間の大半を占める意見に迎合したんじゃないかな。最後の最後で、改革者としての"カリスマ性"が乏しく感じられた。それを踏まえると、僕の評価も70点くらい。ブラジル戦までは、結構よかったと思うんだけどね。結果にとらわれることなく、いろいろな選手を呼んで、試合ごとにメンバーも代えて、"テスト"らしいことをしていたから。
11月の親善試合ではブラジルW杯組が大量に復帰したアギーレジャパン。中山 最終的に11月のメンバーになったのは、杉山さんが言ったように、世間の空気感に影響された部分があると思います。実はこれが、日本のいちばんの問題。ザッケローニ監督もそうでしたけど、世の中の空気にどんどん流されていってしまう。「6試合はテスト」と言ったんだから、本来それを貫くべき。にもかかわらず、4試合テストしたところで、アギーレ監督も、協会も「勝ちにこだわる」と急に言い始めました。一貫性がないと思いますね。
杉山 そう、それが大きなマイナスポイント。
中山 早くも、ブレた感が拭えないですよね。やはり、チームを引っ張っていく監督というのは、ブレてはいけない。ザッケローニ監督でも、2年間くらいはブレずにやっていました。けど、アギーレ監督は、すでに日本の空気に流されている印象がありますからね、そこはちょっといただけない。
浅田 繰り返しになるけれども、もしメンバー選考の過程が逆だったら、ブレている印象はなかったと思うんだけどね。ただそこには、アジアカップの位置づけ、という問題が関係してくる。アギーレ監督の就任当初は、アギーレ監督にしても、協会にしても、アジアカップをどう位置づけていたのか、はっきりしていなかった。
杉山 でも、世間では急に「アジアカップは優勝しなくちゃいけない」といったムードになってきた。
浅田 そう。アジアカップで優勝したら、W杯前年に開催されるコンフェデレーションズカップに出られるわけだから、もしも「是が非でも優勝を狙う」というのであれば、最初から協会はもっとそれを前面に押し出すべきだった。監督にも「テスト」なんて言わせてはいけなかった。でも当初は、おそらくそこまでの考えはなくて、協会も"テスト"を容認していた。それが、なかなか結果が伴わなくて、世間の風当たりが強くなってきたから、「アジアカップで結果を残さなければいけない」といった"逆風"を吹かせて、アギーレ監督にプレッシャーをかけるというか、代表を取り巻くムード変えようとした感がある。
――それで、ブラジル戦に惨敗したあと、世間の批判をかわすとともに、アジアカップで結果を出すための、現実的なメンバー構成になった、というわけですね。
杉山 そうだと思うよ。でも僕は、「ちょっと待ってよ」と言いたい。優勝した前回大会(2011年)だって、ベスト4くらいの実力はあったかもしれないけど、そこから上は紙一重。やってみないとわからない。それなのに今は、「優勝がノルマ」といった雰囲気になっている。それは、おかしい。4年後のW杯を考えた場合、アジアカップでの優勝が何の役に立つのか、という議論もしていないんだから。
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