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アギーレJの船出に憮然としていた吉田麻也の心中 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT

 とはいえ、中には戦う姿勢を見せた選手もいた。ウルグアイ戦で失点につながるミスをしたDF坂井達弥である。初代表という立場にあって、普通なら落ち込んでも不思議はないが、彼はミスをしたあとも下を向くことはなかった。その姿に、今後の可能性を感じた吉田は「センターバックは、こういう経験をして一歩ずつ階段を上がっていくんだ」と、坂井に声をかけたという。

 また、ベネズエラ戦の途中では、選手たちの戦う気持ちが前面に出て、チーム全体の士気が上がった時間帯があった。

「前半は、みんな動きが少なくて、テンポも上がらなかった。でも、武藤(嘉紀)がゴールを決めてから(後半6分)、ようやくみんな、前に行く姿勢を出し始めた。(代表に)新しく入った選手も、前からいた選手もみんな、『オレが』っていう雰囲気になって、スイッチが入った感じだった。

 本来、そういう気持ちは常に持っていないといけない。そうじゃないと、W杯でまた同じ過ちを繰り返すことになる。そこは、これからも(みんなに)要求していこうと思いますし、自分ももっと戦う姿勢を見せられるようにしていきたい」

 4年後のロシアW杯に向けて、チームは始動したばかりだが、吉田は悠長に構えてなどいない。数少ない代表での活動を大切にし、一戦一戦、気を抜かない覚悟でいる。

「このあとも、みんなクラブに戻って、試合に出て、(代表戦に向けて)常にいいコンディションを保っていくことが重要。まあそれは、僕に一番求められていることだと思うけど、それに対しての意識はしっかり持っているつもり。(欧州は)シーズン序盤のすごく大事な時期。そこで試合に出て、波に乗っていきたいと思っています。

 そうした流れの中で、代表でもいいプレイをしていきたい。今回、武藤や(柴崎)岳ら、新しい選手が活躍したけど、これからは代表の競争が一層激しくなる。自分もうかうかしていられないし、そういう状態が、自分にとっても、チ-ムにとってもベストだと思います」

 完全なヒエラルキーが形成されていたザックジャパンでは、ほとんど競争がなかった。しかし、アギーレジャパンでは新旧入れ乱れての“戦国”の様相だ。それもまた、世界で、W杯で勝つためには必要なことだと、吉田は強く思っている。

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