アギーレJの船出に憮然としていた吉田麻也の心中 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT

 しかし、初戦のウルグアイ戦では、思ったことの半分もできなかった。とりわけビルドアップ、攻撃ではほとんどいい形を作れなかった。パターン化され完成度の高かったザッケローニ監督時代の攻撃に比べて、かなり見劣りした。

「後ろの僕らがボールを持つ位置が低過ぎた、という面があった。ただ、真ん中(中盤)にボールが入ったときに、もう少しアイデアがあってもいいのにな、と思うこともあった。それに、前につなげられないから、横パスやバックパスが多くなってしまった。ヤットさん(遠藤保仁)がいないから、というわけじゃないけど、ずっと(攻守のつなぎ役を)やっていた選手がいなくなると、そういう部分でも影響があるんだな、と思いましたね。

 守備では、アンカーを使ってカウンターを封じるという点は、自分たちのミス以外で相手にそういうシーンを作らせなかったので、評価できると思います。でも、連動して守備をする、という部分はまだまだです。パスミスや判断ミスが多かった。みんなが連係して守れるようになるには、もう少し時間がかかるでしょう」

 新監督を迎えて、メンバーも、システムもガラッと変わった。実質2日間の合同練習では、世界の強豪国さえ、組織的かつ完璧なサッカーを実践するのは難しいだろう。当然、中3日で行なわれた2戦目のベネズエラ戦でも、何かが劇的に変わるはずはなかった。

 吉田自身、思い描いていたことがそう簡単にできるとは思っていなかった。それでもなお、吉田の表情が最後まで晴れなかったのは、それだけが原因ではない。ブラジルW杯のときに痛感した「戦う気持ち」が、自らも含めて、まだまだ足りないと感じたからだ。

 ブラジルW杯のあと、吉田はこう言っていた。

「(世界で勝つためには)戦術うんぬんよりも、最後は気持ちだというのがはっきりとわかった。ネイマール(ブラジル)だって、ロッベン(オランダ)だって、最後まで諦めずに走って、戦っている。でも、自分たちは本気で、死ぬ気で戦えたかと言えば、そうじゃなかったかもしれない。どんなときでも、どんな試合でも、戦う気持ちを持って、100%全力で戦わないと、日本はW杯で勝てない」

 今回の2試合で、吉田は改めてその気持ちを胸に秘めてプレイした。親善試合だろうと何だろうと、勝負にこだわって、全力を尽くそうと決意していたが、選手全員の意識はそこまで高くなかった。それが口惜しかった。

「プレイ面では、みんな、監督の要求に素直にこたえようとしてばかりで、『オレが決めてやる』という動きが少なかった。あと、(ベネズエラ戦で)PKをとられたときなんか、審判に激しく抗議して、もっとプレッシャーをかけないといけない。その結果、次に何かあったときには、僕らがPKをもらえるかもしれない。そういうことができないのは、(日本の選手は)ちょっと正直過ぎるかな、と思った」

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