合格点は岡崎慎司と長友佑都だけ。日本代表史上に残る緊張感の欠如

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 国立競技場は泣いていた。試合前、激しく降っていた雨は、試合が終わる頃にはすっかり上がっていた。にもかかわらず、その涙は収まっていなかった。「代表最後の国立」。そんな感慨にしんみりひたっていたからではない。涙は、2002年日韓共催W杯の会場から漏れたとき、すでに出尽くしていたはずだ。

 代表の使用頻度はその後、激減。この一戦も4年ぶりの試合だった。国立競技場から日本代表のイメージが失われて、すでに何年も経過していた。

 今回の涙は、少し意味が違う。そこには怒りさえ混じっていた。

2得点をあげた岡崎慎司と本田圭佑。序盤こそ攻勢に出た日本だったが......2得点をあげた岡崎慎司と本田圭佑。序盤こそ攻勢に出た日本だったが...... 日本代表史上に残るダメ試合。ザックジャパンは、ワーストゲームと言いたくなるひどい試合をした。最後の国立が聞いて呆れるような。

 とにかく寒かった。真夏のニュージーランドからやってきた選手たちにとって、必要以上にこたえたはずだ。立ち上がりの彼らの動きは極端に悪かった。

 試合後、記者がザッケローニに「立ち上がりから日本の動きはよかったですね」と、感想を求めていたが、日本がよかったのではなく相手が悪かったのだ。前半17分 までに日本が4点ものゴールを重ねることが出来た最大の原因だ。日本はホームの利に恵まれ、相手はアウェーのハンディに泣いた。アウェー戦が異常に少ない日本は、自分たちがアウェーに出かけると「アウェーのハンディ」をしきりに強調するが、相手を迎えた場合には気にかけない。記者の書く原稿にもその配慮がない。「お・も・て・な・し」の精神を働かすことができていない。

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